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zoom RSS 『Hunger/ハンガー』 スティーブ・マックィーン監督 その1

<<   作成日時 : 2011/02/14 01:55   >>

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今回は2008年のカンヌで新人賞にあたるカメラドールを受賞した作品、『ハンガー』を紹介します。カンヌでの受賞をきっかけに多くの賞を獲得し、国際的に評価の高い作品ですが、実際に鑑賞してみればそれも納得のすごい作品です(・∀・

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『Hunger』(2008)
映画祭上映タイトル『ハンガー』

監督/脚本 スティーブ・マックィーン
出演 マイケル・ファスベンダー…ボビー・サンズ
   リーアム・カニンガム…モーラン神父

製作 イギリス・アイルランド
受賞歴 2008年カンヌ国際映画祭 カメラドール

◎あらすじ
 IRAの政治犯を収容するメイズ刑務所。そこには看守として働くローハンや、新たに刑務所へ来た青年、そして囚人のリーダー格ボビー・サンズがいた。1981年、サッチャー首相は彼らから政治犯の資格を奪おうとし、IRAの政治犯たちは抗議する。しかし効果はなく、ボビーはやがて自らの主張を知ってもらうためハンガー・ストライキを計画する。

◎感想
 さて、この作品の最も非凡な点は、芸術家でもあるマックィーン監督の映像でしょう。とにかく、なんでもないはずの、あるいは後述するような本来は汚いとされているものまでもが芸術的に美しく映し出されます。監督の映像を堪能するだけで、90分があっという間に過ぎてしまうほどです。実際に多くのインタビューやレビューでも、監督の作り出す映像美を中心に本作には賞賛が集められています。ですから、ある意味ではこの作品は一つの映像体験として見るのが正解なのかもしれません。あまり言語化して語らずに、感じればいいと。

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 とはいっても、それだと観て下さいで終わってしまうので、少し作品についてストーリーも追いつつ言葉で伝えられることを書いてみたいと思います(管理人にはそこまでの芸術的センスもないので:笑)。
 『ハンガー』というタイトルなので、ハンガー・ストライキの中心人物であるボビー・サンズにだけ焦点を当てたのかと思っていたのですが、実際には彼が登場するまでに他の人物についても描かれます。

 まずはじめに、メイズ刑務所へ入れられたIRAの若い青年が入所してきます。彼はなぜか服を着ずに牢獄へ。実はこれが、サッチャーの政策に抵抗する一つ目の手段、ブランケット・プロテスト。要するに服を着ないで、ブランケットだけを羽織って抗議の姿勢を表わすというものです。彼らからすれば、自分たち政治犯と普通の犯罪で刑務所に入れられている人間はまったく種類が違うわけなので、政治犯という認定がなくなるのは耐えられない屈辱なのでしょう。

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 しかし、これがあまり効果がない。そこで青年と同じ牢獄に入っている先輩囚人をはじめIRAの政治犯たちがはじめた第二の抵抗が、ダーティ・プロテストと呼ばれるもの。要するに、尿を廊下に撒き散らしたり、壁に自分の糞をなすりつけることによって、抗議するもの。これはインパクト大の抵抗ですね(・∀・;
 ただ、映画の中ではこのシーンは糞をなすりつけることからインパクトを受けるのではなく、糞を円形の模様に塗りたくることで絵画を思わせる芸術的なシーンに仕上げた監督の仕事にインパクトを受けます。こんな映像を撮ったのは映画史上はじめてなんじゃないでしょうか(笑)

 そして囚人に対して看守たちも負けずに、それらを洗浄したり、ときには彼らに暴力的な方法で言うことを聞かせます。しかし、これだけだと囚人が正しくて、看守が悪者のように見えてしまうでしょう。この映画はその点で中立的な立場を取ろうとしているのか、ときにカメラは看守長ローハンの日常生活を描き、それによって一面的な見方をさせないようにしています。とくに看守は朝家を出るとき、車の裏側をのぞき込んで爆発物か何かが仕込まれていないのかを確認します。彼らは正義のために働いているのに、命を狙われる立場にあるとすれば、IRAの囚人側だけが正義とは言えなくなるでしょう。

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 こうして二つのプロテストが成功せず、いよいよボビー・サンズが登場。彼が友人の神父にハンガー・ストライキを始めることを告げるシーンは、17分以上のワンカットで描かれ、作品中もっとも話題にのぼるシーンです。個人的にはボビーがした、ロバ(foal)の話が記憶に残っていたりします。このシーンでは『フィッシュ・タンク』のコナーさんとはうってかわって、マイケル・ファスベンダーが迫真の演技を見せてくれます。ここまで真剣で、男らしい(男くさい?)演技ができる人だとは思ってませんでした(´∀` さらに、彼がハンガー・ストライキを始めたあとのボビーを演じるために行った減量はすさまじく、最終的には彼は骨と皮だけという状態にまで自らを追い込んでいます。すごい役者魂。ハンガー・ストライキの結末はご存じの方もいるでしょうが、ここでは触れずに最後にこの作品全体について思うところ、感想などを。

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 まず管理人が一番イイと感じたのはカメラワーク。ただ単に自分がすごく好きな仕方でカメラが映像を切り取り、移動していったという話なのですが(笑)、とはいえ監督は映像をどう見せるかということにかなりこだわっていると思います。
 前半ではかなりリアル志向な映像を淡々と見せる一方、後半で少しだけ叙情的なシーンが現れます。この落差は個人的には好きです。リアルならリアルのままが良かったという方もいるかもしれませんが、叙情的な部分で人間味が感じられるからこそ、本当に最後の現実が引き立つのではないでしょうか。ラストカットの感情の無さといったら…。

 その一方で少し疑問に思うのは、テーマについてです。監督はボビー・サンズが忘れられ、それを思い出させるためにこの作品を作ったのであり、IRAの政治犯としての彼に対しては肯定も否定もしないという態度を取っているそうです。確かに前述したように、看守の日常を描くことでバランスを取ろうとしているのは鑑賞中に感じました。そして、IRAというテロリスト(と言っていいのかな?)としてのボビーを肯定することは批判などを考えれば難しいかもしれません。しかし、このテーマを客観的に描いてどれだけの意味があるのでしょうか。ただ史実を突き付けて、この事件を忘れないでとだけ監督は言いたいのでしょうか。

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 そうではないでしょう。後半のボビーの叙情的な描き方を見れば、やはり監督は彼に同情的というか、感情移入をしていると思います。それにもかかわらず、肯定はできないかなという考えが邪魔をしたのか、なにか事件の衝撃以上のもの――たとえば人間についてだとか、信念の強さについてだとか――を本作は伝えきれていないように感じました。やせ細ったボビーを見て、何か胸を打つものは感じるのですが……。やはり、ボビーに対して、彼のハンガー・ストライキに対して、明確に監督が態度を決定する必要があったのではないでしょうか。もちろん、あえてクールになることに徹していると捉えることもできると思いますし、それ以上のことを望むのがおかしいと思われるかもしれません。ただ、後半の叙情性が好きだったので、そこからもっと多くを語れたんじゃないかなと思ってしまいます(・∀・;

 最後に少しケチをつけましたが、はっきり言ってしまって、とても優れた作品であることは間違いありません。「ぷらねた」で紹介している中でも、多くの方に受け入れられるであろう、とくにオススメできる作品です。セリフは英語ですが、uk版のDVDには耳が不自由な方のために英語字幕が入っています。さらに言えば、一つ一つのセリフが分からなくても作品全体は理解できますし、やはりこの作品のメインは監督の映像を体験することにあると思います。というわけで、ぜひ『ハンガー』を鑑賞してみて下さい(´∀`

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本作の監督インタビューを和訳した「その2」はこちら!
http://planeta-cinema.at.webry.info/201102/article_2.html

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