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zoom RSS 『The Forsaken Land』 カメラドール受賞作 その1

<<   作成日時 : 2011/10/08 19:39   >>

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今回はヴィムクティ・ジャヤスンダラ監督の長編第一作にしてカンヌ映画祭カメラドール受賞作『The Forsaken Land』を紹介します。スリランカ映画は初めてでしたが、カンヌで評価されるのも納得の美しく暗示的な映像が印象に残る作品でした。

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『The Forsaken Land』(2005)
原題『Sulanga Enu Pinisa』
監督/脚本 ヴィムクティ・ジャヤスンダラ
製作 スリランカ・フランス
受賞歴 2005年カンヌ国際映画祭 カメラドール

◎あらすじ
 内戦が停戦中のスリランカ。内戦で荒廃したと思われる村の小さな家で、警備員のアヌラと若い妻ラタ、そしてアヌラの妹ソーマの三人は暮らしている。しかし、三人はそれぞれに疎外感を感じ、会話も少ない。不穏な空気が支配し、誰もが希望を持たなくなった「見捨てられた土地」で生きる人間を描く。

◎感想
 カメラドールを獲得した作品ということでずっと観たいと思っていた本作『The Forsaken Land』、US版DVDを購入したので紹介します(・∀・
 監督はスリランカで生まれ、フランスで映画を勉強したというヴィムクティ・ジャヤスンダラ監督。本作は実際にスリランカ国内で撮影されたそうですが(撮影時は停戦中)、あらすじにも書いたとおり、スリランカの内戦が作品の背景にあります。というわけで、まず簡単にスリランカ内戦についてまとめておきましょう。

 スリランカ国内にはシンハラ人とタミル人がいるが、イギリスからの独立以降、多数派のシンハラ人を優遇しタミル人を排斥するような政策がとられた。そのため民族間の対立が強まり、1983年の暴動・虐殺から実質的に内戦が始まる。87年には反政府組織「タミル・イーラム解放の虎(以下、タミルの虎)」が独立宣言をする。その後も内戦は続いたが、2002年にタミルの虎とスリランカ政府が停戦に合意。しかし2008年にタミルの虎が停戦を破棄、翌年にはタミルの虎が敗北宣言を出し、内戦は終結した。

 これ以上の詳細はWikipediaにゆずるとして(笑)、とにかくこの映画がこのような内戦を背景とし、停戦中の村を舞台としているということは知っていると映画が観やすくなる知識だとは思います。それでは本作の感想に入っていきます。

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 作品の主要人物はあらすじに書いた3人と、何人かの村の人々。実はあらすじを書くのに苦労したのですが、本作には一本の核となる物語の筋がありません。3人の日常の様子を捉えることによって、内戦そしてそれに続く停戦を生きてきた「人間」を映画は描こうとしているように思われます。はっきり言って、まったく明るい内容はありません(・∀・; 停戦中なんだから「今は平和で楽しく暮らしてるんじゃないの?」と思ったのですが、大間違いでした。それを開始してすぐに感じさせてくれるのが、家の前を朝方に通り過ぎていく戦車。「停戦」とは、平和を意味するものではないことが最初に示されます。

 内戦を経験し、停戦中の今も戦車や軍人を乗せたトラックが道を往来するのを見る。そうした生活を送ってきた村人はやはりみな希望を持っていないように思われます。カメラは村人の日常を追っていきますが、アヌラの若い妻は浮気に走り、村の少女は「私も大人になれるの?」と大人に尋ねます。それから村の老人が語るある少女の物語の後味の悪さ。こうやって改めて書くと暗い映画だったのかなぁ(´∀`; そして極めつけが、アヌラの妹ソーマの「こんな罪深い土地!私は神のいる土地で死ぬべきよ」という発言。これがおそらく『The Forsaken Land』(=『見捨てられた土地』)というタイトルにつながっているのでしょうが、村人の誰一人も自分が生まれ育った土地に希望を見出していないことが印象的でした。

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 このように「内戦映画」ならぬ「停戦映画」を作ることによって、監督は希望を失った人間がどう生きるのかに迫ろうとしています。その意味では確かにある種の「人間一般」を描く普遍性があると言うこともできるでしょう。しかし、監督自身が「その2」で訳したインタビューの中で「この映画はどの場所でも作ることができた」と語っている一方で、上述したような状態にまで人間が陥るような状況として「スリランカ内戦」が単なる背景以上に影を落としているようにも感じました。

 そして映画は後半、どんどんと救いようのない方向に進んでいきます。このあとは実際にDVDで鑑賞してみて下さい。衝撃的なこともなく、ただただ救いがない。救いがないのはその場所が「見捨てられた土地」だからなのでしょうか。

 あまりあらすじについて書くことがない(というかあらすじがない)ので作品のテーマについて少し書いてきましたが、個人的にこの作品で一番良かったと思うのは映像です。その映像の中でもとくに印象的だったのは、作品のテーマやタイトルにはまったく似合わないくらい綺麗な空。青と水色の間のなんとも言えない色に目を奪われました。
 作品の前半では空や光、自然の美しさが全体的に目立つのですが、土地そのものが美しいことで、逆にその土地を「見捨てられた土地」と思わざるをえなくなる村人たちの絶望が引き立たされているとも言えるかもしれません。

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 一方で作品の後半あたりからは、幻想的・詩的な映像が目立ってきたと思います(オープニングも結構幻想的ですが)。監督はフランスで映画を学んだということで、ミニマリズムの作品の中にもいわゆるアート系と言われるような映像があり、うならされます(・∀・ スリランカ映画と聞いて思い浮かべるものよりも、かなりヨーロッパ映画に近い雰囲気を感じました(この作品以外のスリランカ映画がどういうものかは知らないのですが)。

 ヴィムクティ・ジャヤスンダラ監督はこの作品のあと、ヴェネチア映画祭のコンペに出品された『2つの世界の間で』(東京フィルメックスにて上映されたそうです。管理人は未見)、今年のカンヌの監督週間に出品された『Chatrak(Mushrooms)』と順調に作品を発表しているようで、これからも要チェックですね(・∀・ 気になる方はぜひ本作を鑑賞してみてください。DVDはアメリカとフランスで発売されています。

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本作の監督インタビューを和訳した「その2」はこちら!
http://planeta-cinema.at.webry.info/201110/article_2.html

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