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zoom RSS 『エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPE』 ジョゼ・パジーリャ監督 その1

<<   作成日時 : 2011/12/03 00:40   >>

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ベルリン映画祭で金熊賞を受賞した『エリート・スクワッド』の続編『Tropa de Elite 2』が、『エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPE』というタイトルで日本でもDVD化されました。前作以上の衝撃と完成度を誇る素晴らしい作品になっています。

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『Tropa de Elite 2』(2010)
邦題『エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPE』
英題『Elite Squad: The Enemy Within』
監督/脚本 ジョゼ・パジーリャ
出演 ヴァグネル・モーラ…ナシメント
   アンドレ・ハミロ…マチアス
製作 ブラジル
受賞歴 2011年シネマ・ブラジル・グランプリ8冠
    2012年アカデミー賞外国語映画賞 ブラジル代表

◎あらすじ
 前作『エリート・スクワッド』のあとも、ナシメントはBOPEを抜けることなく任務に励んでいた。しかし、刑務所で起きた暴動への対応から非難を受け、ナシメントはBOPEを除隊させられ、公安部へ異動することになる。
 その頃、BOPEの活躍でドラッグ・ギャングたちの勢力が弱まったスラムでは、腐敗した警官たちが私欲を満たすための新たなシステムを構築しつつあった……。

◎感想
 当ブログでも以前取り上げた『エリート・スクワッド』、そしてその続編であり今回取り上げる『エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPE』が、ついに日本でもDVDで発売されました。本作がこれほど早く観れるとは思っていなかったので嬉しいかぎりです。前作を記事で取り上げたこともあって、インタビュー記事だけ更新しようと思っていたのですが、素晴らしい作品だったので感想も書いてしまいます!

 前作ではスラムにおける麻薬ギャングとBOPEの戦い、あるいは一般警察の腐敗を描いていました。監督が予告していた通り、ブラジルの問題を暴きだす三部作のラストとなる本作は、ギャングや警察の腐敗を生みだした政治に焦点があてられています。いやあ、恐ろしい内容でした…(・∀・;

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 特殊部隊BOPEを率いていたナシメントは、暴動への対応に関してフラガという有名な人権家から非難されてしまいます。選挙を控えて世論を気にした知事は、ナシメントをBOPEから外すことを即断。こうして序盤から、政治権力の威力が匂わされます。
 ここで面白かったのは、前作同様に、「しかし当事者であるブラジル人たちはどう思っているのか」を描いているところ。ギャングを撃ち殺すBOPEは非道だと人権家が言う一方で、一般人はナシメントを拍手で迎えるし、人気があるらしいテレビ司会者はナシメント支持を大声で叫びます。これは後述しますが、難しい問題だと思います。

 さて公安部の盗聴部門へ異動になったナシメント。その間にBOPEはスラムのギャング掃討を進め、結果を出します。こうしてリオのスラムに平和が訪れ……ないんですね。密売人たちと癒着し金儲けしていた警官たちは、ギャングとの結託を見切り、新たなシステムを考え出します。それは、スラムの人々からギャングから守るための「税」という名目でお金を絞り上げるというシステムです。こうして腐敗した警官たちは「ミリシア」という武装組織へと発展していきます。そして、ここが凄いところ、恐ろしいところなのですが、スラムの人々は単なる金ヅルではなく、政治的にも大きな「財産」を持つことに彼らは気付きます。

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 さて、政治という巨大すぎる敵や政治をバックにしたミリシアにナシメントはどう立ち向かうのか。日本でもDVDが発売されましたし、あらすじはこのくらいにして全体的な感想を(´∀`

 とにかく今作に関してまず出てくる感情は、ブラジルってこんなことになっていたのかという驚きです。「清廉潔白な政治家」は形容矛盾だなんていう冗談を聞いたことがありますが、いくらなんでも本作で描かれる警官(ミリシア)と政治の腐敗はひどい(「その2」を読んでいただければ分かるように、監督はこの作品が事実に基づいていることを強調しています)。前作同様、このような切り込むにあたっては大変な困難が予想される社会問題に挑んだパジーリャ監督は賞賛されるべきでしょう。

 また、これも前作の感想で書きましたが、本作も単なる社会派映画というだけでなく、映画として非常に引き込まれる作品になっていました。特に今回は全編にわたるナシメントのモノローグによって、ナシメントという一人の人間を描く作品としても深みを増したように思います。苦悩する彼にはとても感情移入できました。いろいろあって、ナシメントも結構丸くなったということでしょうか(・∀・ ナシメントを演じるヴァグネル・モーラは素晴らしい演技を見せてくれます。

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 そして最後になりますが、本作にはアメリカの「対テロ戦争」への視角を感じました。ギャングを殺せという態度のテレビ司会者は、「ギャングに人権はない!奴らはテロリストだ、テロリストは人間じゃないんだ!」と言います。あるいは、(鑑賞した方は分かると思いますが)タンケ地区での掃討作戦をナシメントは「この作戦の名前が分かるか?「イラク作戦」だ」と自嘲します。
 フラガのような人権家はいかなる理由であれ殺人をすべきではないと考え、BOPEを残虐だと批判します。ギャングに怯えるリオの人々はそんなBOPEを率いるナシメントに拍手を送りました。「対テロ戦争」で反戦を訴えた人もいましたが、テロに怯えた多くの人々は戦争を支持しました。そういえば、ビンラディンの殺害は映画化が予定されているそうですね。その映画はきっと、ビンラディン殺害を悲劇として描いたりはしないのでしょう。
 ギャングもテロリストも、大義や正義のもとに排除されるわけですが、本作のクライマックスでナシメントは何を語ったでしょうか。このことを考えると、三部作の最後の最後になって、監督はなかなかに難しい問いを観客に突きつけているのかもしません。

 『バス174』、『エリート・スクワッド』、そして本作。いずれも非常に衝撃的で、心に訴えかける三部作になりました。ついにDVDが発売されたので、ぜひ。少なくとも本作は、前作を観てからの方がオススメです(邦題はどっちがどっちか分かりにくいですが・・・)。手前味噌ですが前作については、
『エリート・スクワッド/Tropa de Elite』 ジョゼ・パジーリャ監督 その1(紹介編)
『エリート・スクワッド/Tropa de Elite』 ジョゼ・パジーリャ監督 その2(監督インタビュー)
を参照していただけたら嬉しいですm(_ _ )m

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本作の監督インタビューを和訳した「その2」はこちら!
http://planeta-cinema.at.webry.info/201112/article_2.html

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