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zoom RSS 『俺の笛を聞け』 フローリン・サーバン監督 その1

<<   作成日時 : 2012/01/08 00:39   >>

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あけましておめでとうございますm(_ _ )m 年末に素晴らしい映画を観ました。2010年のベルリン映画祭で審査員グランプリを含む二冠に輝いたルーマニア映画『If I Want to Whistle, I Whistle/俺の笛を聞け』です。海外での評価の高さは知っていましたが、こんなにいい作品だとは想像もしていませんでした。

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『If I Want to Whistle, I Whistle』(2010)
原題『Eu când vreau să fluier, fluier』
邦題『俺の笛を聞け』
監督/脚本 Florin Serban(フローリン・サーバン)
製作 ルーマニア・スウェーデン・ドイツ
受賞歴 2010年ベルリン国際映画祭 銀熊賞(審査員グランプリ)・アルフレッド・バウアー賞

◎あらすじ
 少年院の出所を2週間後に控えた18歳のシルヴィウ。しかし、遠い昔に自分を捨てた母親が、大切に育ててきた弟を連れてイタリアへ行こうとしていることを知らされる。なんとか阻止しようとするシルヴィウだが、少年院の中でできることは限られている。
 ……焦りだけが募るなか、彼はソーシャル・ワーカーとして少年院に来た美しい女性と出会う。

◎感想
 21世紀もっとも注目されていると言っても過言ではないルーマニア映画界ですが、本当に次から次へとすごい作品が出てきていますね。今回取り上げる『If I Want to Whistle, I Whistle』という印象的なタイトルを持った作品は、これまでに観たルーマニア映画の中で一番好きな作品かもしれません(『4ヶ月、3週と2日』もあるけれど)。リアリズムの中に少しの叙情性が香る傑作です。

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 本作の舞台は少年院。まだ幼い弟が主人公シルヴィウのもとへ面会にやってくるところから物語は始まります。弟が彼に告げたのは、以前に自分たちを捨てた母親が戻ってきてイタリアへ自分を連れて行こうとしているということ。これを聞いたシルヴィウは、自分一人の力で育ててきた弟をいまになって奪われることに憤りを感じて猛反対。どうにかして母親の計画を阻止しようとします。

 しかし、母親が一週間後にイタリアへ出発するらしいのに、シルヴィウが少年院を出所できるのは二週間後。このままでは、自分が出所したときには弟はイタリアへ連れて行かれている可能性が高いことになります。
なんとかしなくてはと焦りばかりが募るシルヴィウでしたが、出所予定者のための面接で彼に転機が訪れます。彼を担当したソーシャル・ワーカーは、美しいアナという女性……(・∀・ この出会いが彼にとって重要なものになります。

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 ところで、この作品はBGMなし、シーンも少年院の中がほとんどと、ミニマリズムを体現している作品ですが、背景情報についても観客に知らされることは限られています。たとえばシルヴィウが何をして少年院に入ったのかは作品内では語られていません。もちろん、母親がいない状況で自分と弟が生活をするために、盗みをしたのではないかと想像することはできるでしょう。ちょっと怒りっぽいからケンカしただけかもしれませんが。それからタイトルの意味も明らかにされず、解釈は観客の手に委ねられているように思います。

 ちなみに本作の背景の一つとして、ルーマニアでは、シルヴィウ兄弟のように、国内に仕事がないため両親がイタリアやスペインに出稼ぎに行ってしまい、国内に残された子供たちのことを「ストロベリー・キッズ」というらしいです。両親たちが主に苺を摘んだりしてお金を稼いだことからこの名前がついたとか。しかしこうした出稼ぎはうまくいかず、結果として残された子供たちが、生きるために様々なことをして刑務所に入るケースが多いそうです(ソース)。

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 さて、話の筋に戻りましょう。少年院の中でシルヴィウにできることは限られていますから、母親の計画を阻止するというのはなかなか難しい。在院者の中には携帯電話をタバコと交換で貸してくれる人間がいたりして、シルヴィウは母親に面会に来るよう約束を取り付けます。

 しかし、シルヴィウにはこの母親が自分を捨て、大切な弟を奪おうとしている存在としてしか映りません。久しぶりの再会をどんなに穏やかに冷静に迎えようとしても、二人の間には埋めようのない溝があります。この面会の結末、シルヴィウとアナ、そしてシルヴィウが選んだ行動。書きたいことはありますが、ここから先はぜひ観ていただきたいと思います。というわけで最後に作品全体の感想を。

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 管理人がもっとも胸を打たれたのは、シルヴィウが最後にした一つの要求。このあたりは正直リアリティがあるのかないのか微妙なところですが、それはまったく問題ではなく、あの部分に一人の青年の青春と切なさが詰まっていました。こう言うと安っぽく聞こえるかもしれませんが、この作品はある意味で「青春ムービー」なのでしょう。終盤からラストは、映画として、18歳という微妙な年齢の人間の数日間を描いた作品として、個人的には完璧だと感じました。

 ミニマリズムというとリアリティが話題になりますが、映画をわざわざ作るということは、ただ単に現実を見せることだけではなくて、この完璧とは程遠い現実の中に、何かを見出したり希望を込めたりすることなのではないでしょうか。少なくともフローリン・サーバン監督はそうした視線を持っているように感じましたし、管理人はサーバン監督を全面的に支持したいと思います。本当に素晴らしい作品でした。

本作『If I Want to Whistle, I Whistle』は日本では映画祭でもかかっていないようですが、最近2,3年遅れで海外の映画祭を沸かせた作品が公開されることも多くなってきた気がします。このレベルの作品がなんらかの形でも観られないということはないと思いますが、DVDはUS版が発売されています。ぜひ。

※予想的中という感じですが、「三大映画祭週間2012」で『俺の笛を聞け』というタイトルで公開が決定したようです!

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本作の監督インタビューを和訳した「その2」はこちら!
http://planeta-cinema.at.webry.info/201201/article_2.html

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