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zoom RSS 『ひばり農園』 パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ監督 その1

<<   作成日時 : 2012/03/25 15:08   >>

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先月のベルリン国際映画祭、見事タヴィアーニ兄弟の『Cesare deve morire(Caesar Must Die)』が金熊賞に輝きました(・∀・ 好きな作品がいくつかある監督ですが、今回は2007年の『ひばり農園』を取り上げます。アルメニア人虐殺をテーマにした重い作品。

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『The Lark Farm』(2007)
原題『La masseria delle allodole』
映画祭上映タイトル『ひばり農園』
監督/脚本 パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ
原作 アントニア・アルスラン『ひばり館』
出演 パス・ヴェガ…ヌニーク
   モーリッツ・ブライプトロイ…ユスフ
製作 伊・仏・西・独・ブルガリア
受賞歴 2007年ベルリン国際映画祭 特別招待作品

◎あらすじ
 第一次世界大戦中のトルコ。裕福なアルメニア人一家の父が亡くなり、イタリアへ移住した長男が父の「ひばり農園」を相続するために故郷に戻ってくるという。一家の娘ヌニークは、トルコ人兵士に恋をしているようだ。しかし、戦争に苦戦しナショナリズムが台頭するトルコ国内にはアルメニア人迫害の影が忍び寄っていた……。

◎感想
 というわけで、『Caesar Must Die』の一つ前の作品にあたる『ひばり農園』を紹介。これまたずっと前にDVDを買ってあったのですが、金熊賞受賞のニュースを聞いて、思い出したように今になって観ました(・∀・; アルメニア人虐殺というテーマがテーマだけに、鑑賞後は重い気持ちになりますが、やはり流石の作品でした。

 舞台は1915年、第一次世界大戦中のトルコ。アルメニア人一家のアヴァキアン家は名家で、「ひばり農園」というお屋敷を所有しています。映画は、この一家の父親が亡くなる場面から始まります。
さて、一家の娘ヌニークはトルコ人兵士に恋をしています。父の葬式でも、参列した彼を気にしてしまうほどなのですが、民族の違いゆえに二人の恋は許されないものです。それでも愛に燃える兵士は、軍隊仲間の力を借りてヨーロッパに駆け落ちしようと計画を立てます。

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 そのころ、イタリアに移住した一家の長男は、父が亡くなり「ひばり農園」を相続することになったという知らせを受け取ります。どうやらイタリアでそれなりに成功したように見える長男ですが、故郷への想いは強く、家族とともに帰ることを決意。

 ……しかし、二人の希望は打ち砕かれることになります。ロシアとの戦争に苦戦するトルコでは、「トルコはトルコ人のもの」、「アルメニア人を排斥せよ」という民族主義が力を持つようになり、ついにアルメニア人虐殺の計画が下されたからです。ちなみに、このアルメニア人虐殺についてはウィキペディアのこの記事あたりを参照してください。この種の問題に関しては客観的な事実を得るのはきわめて難しいと思いますが、比較的にはましなのではないでしょうか(「要出典」がたくさんついてますが)。

 その朝、アルメニア人の男性たちには「公邸に来い」との指示が下されます。そして、アヴァキアン家には夫が公邸に行ったきり帰ってこないと訴える女性たちが押し寄せる……危険を察知した人々は「ひばり農園」の屋敷に避難します。そして、「ひばり農園」の前に集まる軍隊。

 この先のあらすじを書くのは気がめいるので、ここまでにしておきます。
 とはいえ、この作品でもっともインパクトを持つのは、この後に待っている虐殺の部分でしょう。よく「女子供は許してやる」なんて言いますが、この虐殺の目的はアルメニア人を根絶やしにすることにあるわけなので、子供でも男の子は殺されます。生まれたての赤ちゃんでもそうです。これは個人的には驚いた描写でした(もちろん、トルコ人側の目的からすれば当たり前の行為なんでしょうが)。虐殺の知らせを聞いたイタリアにいる長男はどうするのか?ヌニークの運命は?この先は実際にご覧になってご自身の目で確認していただきたいと思います。

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 そういうわけで、本作に関してはやはりアルメニア人虐殺というテーマが何よりも根底にあって、それを伝えるためにすべてがあるという印象を受けました。たとえば虐殺の描き方・演出も、芸術的云々ではなく、リアリスティックに何があったのかを見せようとしています。そういう意味では監督たちの創造的な面が感じられなかったという不満な点も残りました。

 そして、リアリスティックと書きましたが、こういう歴史的な映画を観るときにいつも思うのは「映画はどこまで現実を写し取れるのだろうか?」ということ。つまり、映画は

(1)現実を矮小化していないだろうか?=アルメニア人虐殺について、その凄惨さを本当に映し出しているのだろうか?
(2)現実を肥大化していないだろうか?=史的事実を誇張していないだろうか?この虐殺を否定しているトルコはもちろん、Wikiを見る限りでも、被害者の数の推計には大きな幅があります(ここまで書くと思い浮かぶのは、『南京!南京!』ですが、それは置いておきましょう)。

「すべての映画はプロパガンダだ」なんて言い方もありますが、管理人自身は、映画がまったき現実を映すものだとは思っていません。むしろ、映画には必ず監督の意図が反映されているし、反映されていなければならないと思います。ですから、本作の鑑賞にあたっては、1915年に起きたこの個別的な「史実」については距離を置いて観ていました。それでも本作に価値を見出すには十分でした。

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 その一つは、アルメニア人虐殺についての衝撃。史実としてどれだけの人間が死んだのかは分らないにしろ、トルコにおいてアルメニア人の迫害・殺人があったのはほぼ間違いなく事実であり、ナチスによるユダヤ人迫害以前にこうした問題があったことを知らなかった無知を恥じ入るばかりでした。

 そして何よりも、人間は虐殺を平然とできる生き物だということを描き出している点。トルコ人だからとかではなくて、こうした虐殺はどこででも起こりうること、起きていることです。この作品で描かれている虐殺はとても合理的で(誤解を招く表現かもしれません)、「ああ、人間はこうやって頭を使って虐殺するのか」と思うほど人間の負の部分をえぐり出していました。最後まで観ても誰も幸せにならない映画は久しぶりでしたが、それが徹底されていたのは良かったです。

 鑑賞しても清々しい気持ちにはなれない重たい作品だし、決して傑作ではないと思いますが、タヴィアーニ兄弟が「過去の」巨匠ではないことを示した一本。DVDはUS版が発売されているので、ぜひ。そうそう、モーリッツ・ブライプトロイが出てくるのは後半です(笑)。

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本作の監督インタビューを和訳した「その2」はこちら!
http://planeta-cinema.at.webry.info/201203/article_5.html

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