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zoom RSS 『下女』 キム・ギヨン監督

<<   作成日時 : 2012/04/03 03:29   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 2

 先月限定でKorean Movie Databaseが、あのキム・ギヨン監督の作品を無料で観れるという特集をしていました。もう4月になってしまいましたが、今回は同監督の代表作である『下女』を取り上げたいと思います。いやはや、これは本当にすごい映画でした(・∀・

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『Hanyo』(1960)
英題『The Housemaid』/邦題『下女』
監督/脚本 キム・ギヨン(金綺泳)
製作 韓国

◎あらすじ
 音楽教師のトンシクは、女工たちに合唱を教えている。新居を構えたばかりの彼は、妻チョンシムの負担を和らげようと女工に頼んでメイドを雇う。しかし、やってきたメイドのミョンジャと、トンシクは関係を結んでしまう……この日から、幸せだった一家は破滅へと追い込まれることになる。

◎感想
 映画好きであれば一度は聞いたことがあるであろうキム・ギヨン監督。今回は代表作である『下女』について、感想を書きたいと思います。鑑賞したことがある方には伝わるかなと思いますが、観たら誰かと語りたくなってしまう、感想を書きたくなってしまう、そんな傑作でした(・∀・
 ちなみに、本当はKorean Movie Databaseの特集が終わる前に記事をアップしたかったのですが、間に合いませんでした。この記事を読んでから特集のことを知った方には申し訳ないです。

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 さて、イム・サンス監督のリメイク版が公開されたこともあって、本作のあらすじをご存じの方も多いかもしれません。妻と一男一女の子供に恵まれ、幸せに生活しているトンシク。ある日、彼は合唱を教えている女工からラブレターを受け取ります。とはいえ、当時そうした行為は認められないものであり、トンシクは工場長に報告。ラブレターを渡した女工は失意のうちに自殺してしまいます。

 二階建ての広い新居を構えたトンシクは、自殺した女工の友人である女工に、メイドを紹介してもらえるよう頼みます。この女工も実はトンシクに気があるのですが、とにもかくにも、ミョンジャという女性が一家のメイドとしてやって来ることに。が、彼女は隠れてタバコを吸ったり、家のものを物色したりするという、登場した瞬間から「悪女」な雰囲気を醸し出す女性。そして、「その夜」が訪れます。

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 トンシクに惹かれていた女工は、彼の家でピアノを習っていたときに、ついに愛を告白します。断るトンシクでしたが、なんとその女工は自分で自分の服を破って「あんたにレイプされたって言ってやる!」と脅して出ていってしまう……これだけでも十分に恐ろしいのですが、なんとその一部始終を「下女」ミョンジャが見ていたのでした(´∀`; 彼女はこのことをネタに、トンシクに関係を求めます。

 このあとが、本作の真骨頂。ミョンジャは妊娠してしまい、トンシクを独占しようと一家と対立していきます。ミョンジャと妻チョンシムとの板挟みになったトンシクは途方に暮れるばかりですが、ミョンジャを狂気へと至らせてしまう出来事が起こって……。

 このあたりであらすじはストップしましょう。実際には『下女』はここからが最高に面白く、エキサイティングなのですが。

 本作を鑑賞していてまず息を飲むのが、このストーリーの凄まじさではないでしょうか。ミョンジャに対して彼女の妊娠を知った妻がすること、その報復としてミョンジャが一家にすること……あるいは、そもそもメイドと関係を持ち妊娠させてしまうという話そのものが当時としてはかなり挑戦的だったのかもしれません。ラブレターだけで報告の時代だったようですから。

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 とはいえ、単にハラハラ・ドキドキさせようというストーリーではなくて、ちゃんと監督の人間観が反映された物語になっているところがとても素晴らしい。この作品で取り上げられている人間に対する問いは、「男とはなんぞや?」「女とはなんぞや?」というものだと思います。浮気はするし、浮気相手と妻との間で途方に暮れる男の情けなさ。二人の女性が見せる、恐ろしいまでに燃え上がる女の情念。ミョンジャの狂気だけでなく、妻の「家族を守るためなら何でもする」という執念もすごい。一見デフォルメされているように見える本作の男女描写ですが、実は結構リアルなんじゃないかと思っています。正直に言えば、管理人はこの時期の韓国についての知識がないので、こうした一般化した形でしか本作を捉えられないのですが。

 ちなみに、男という生き物については、エピローグで男がつぶやく言葉が面白い。
「男の弱点さ――高い山を見ると登りたくなる。深い池を見ると岩を落としてみたくなる。美しい女性には、欲望が刺激される」「家の周りに若い女の子がいるなんて、虎に肉をやるようなもんだ」「男は年をとるほど、若い女のことを考える時間が増えていく」――至言?

 でも、これだけでは面白いとは言えても傑作とは言えません。実はもっとも感銘を受けた部分があります、それは監督の演出(カメラワーク)。とくに、足!(笑)。
 どういうことかと言えば、主人公トンシクとミョンジャは関係を持つわけですが、当時はあからさまなセックスは描けません。かといって描かないのではなくて、キム・ギヨン監督はそれを足を写すことによって表現しています。一度目は、ミョンジャの素足をフレームに収めることによって。二度目は、二人の絡み合う足を収めることによって。『下女』以降の作品では男女の裸体や性行為が直接的に映されるのですが、明らかに本作からの方が強い官能性と魅力を感じました。間接的に描写されると、想像力が刺激されるということでしょうか(想像してしまうのも男の弱点)。

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 また、足と言えば、妻チョンシムがミシンのペダルを踏む足を捉えたカットがありました。性的関係を意味する足を見せた上で、家族のために夜も寝ないで頑張っている足を見せるというのは、ものすごい皮肉だと思いますが、しびれました。

  ちなみに管理人が一番衝撃を受けたというか笑ってしまった、とても好きなシーンが、ミョンジャが長男に水を飲ませた直後のシーン。あの絵はすごいなぁ。本作を監督自身がリメイクした『火女’82』でも同じシーンがありましたが、初めて観た『下女』の方のインパクトの大きさと言ったらもう(笑)

 こうしたシーンや衝撃のラストまで、本当に見せ方が素晴らしい、評判通りの作品でした。つい先日、シネマヴェーラで日本最終上映があったと思いますが、韓国で日本語字幕入りのDVDが出ているようです(通販はここここなど)。
 管理人は先月のKorean Movie Databaseの無料特集でキム・ギヨン作品を8本ほど鑑賞しましたが、『下女』が最高で『玄海灘は知っている』がその次に好きでした(・∀・

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本作に関連するインタビューが見つからなかったので、「その2」は省略させていただきますm(_ _ )m

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
はじめまして!キムギヨンの記事探して、こちらに辿りつきました。
すばらしい、解説に、鑑賞した当時の記憶がよみがえりました。

実は、わたくしキムギヨン監督にお会さたことがあります。
10年ほど前の国際交流なんとかの韓国映画祭。
ご夫妻で来日されてまして、友人と観にいきました。

その衝撃は、今でも忘れられないです。
キムギヨンを忘れられないのはもう一つ理由が。

その時に一緒に、写真を撮ってもらったのですが、
その映画祭がおわり、帰国した夫妻は、ご存じの通り、自宅て焼死されました。

生前最後に、来日した日本で、
私と友人は監督にお会いできたんてす。

その写真を、誰かキムギヨン監督を、知ってる方々と共有できればと。

今、フェイスブックで、Hanpenということコミュニティ運営していて、映画部というのを、つくりました。
良かったらのぞいてみてください

そこで、近々写真を、公開しようかな、と、考えてます。

また、こちらも訪問させて頂きます。

突然の書き込み失礼しました。
コンジュ
2013/01/25 04:39
コメントありがとうございます(・∀・

監督とお会いしたことがあるとはすごい!
一緒に写真を撮ったとは……生涯の自慢になりますね。
フェイスブックの方、ぜひ拝見したいと思います。

ちょっと更新が滞っているのですが、そろそろ更新再開の予定です。また覗いてやってください。
ina
2013/01/26 00:15

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