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zoom RSS 『バトル・イン・ヘブン』 カルロス・レイガダス監督 その1

<<   作成日時 : 2012/05/26 14:52   >>

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現在、勝手に展開中の「ぷらねた的カルロス・レイガダス週間」。今回はデビュー作『ハポン』に続く第二作『バトル・イン・ヘブン』を紹介します(・∀・ 露骨な性描写が賛否を巻き起こした作品ですが、監督の才気が爆発している、個人的には非常に好きな作品です。

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『Battle in Heaven』(2005)
原題『Batalla en el cielo』
映画祭上映タイトル『バトル・イン・ヘブン』
監督/脚本 カルロス・レイガダス
製作 メキシコ・ドイツ・オランダ・フランス・ベルギー
受賞歴 2005年カンヌ国際映画祭 コンペティション部門出品

◎あらすじ
 軍の大佐の運転手をしているマルコス。彼は身代金目的で妻とともに子供を誘拐するが、その子供を死なせてしまった。苦しむマルコスは、売春をしている大佐の娘アナに罪を告白する。

◎感想
 前回に続いて、今回は『バトル・イン・ヘブン』を取り上げます。個人的には本当に好きな作品で、素晴らしい作品だと思っているのですが、過激な性描写ばかりが(少し見た感じ海外でも)話題に挙げられ、賛否はかなり分かれている作品のようです(Imdbだと5点台…)。というわけで、「賛」の立場から本作の簡単な紹介と感想を。

 本作については、まずオープニングに触れなければならないでしょう。何もない室内で、マルコスの顔を正面から捉えるカメラが少しずつ下がっていくと、アナが彼にフェラチオをしているというものです(・∀・; このシーンは心象風景のようなものなのですが、本作のラストを理解する上でとても重要なシーンです。とはいえ、改めて見ると確かに過激というか、人によっては冒頭から引いてしまうシーンかも(ちなみに海外版DVDは修正がないので苦手な方はとくに注意)。

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 このオープニングのあと、実際の物語が始まります。マルコスは妻とともに親戚の子供を誘拐したのですが、妻からその子供が死んでしまったことを告げられます。思い悩むマルコスでしたが、頼まれていた通り、大佐の娘アナを空港に迎えに行くことにします。アナは内緒で売春をしていて、売春婦たちが集まる家まで送らせるのですが、そこで彼は彼女に誘拐のことを話してしまいます。

 ここでマルコスがアナに誘拐の話を打ち明けるのはよく理解できます。何か悪いことをしてしまったときに、それを打ち明けて、楽になりたいという気持ちはあるものです。そして、そういう場合に打ち明ける相手というのは、自分とそれなりに親しく、部外者で、誰かに告げ口をしたりしない人間でしょう。アナはマルコスにとって、そういう相手だったと言えます。

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 なのですが、アナは話がしたいと言って何度も訪ねてくるマルコスが、それを口実にして自分とセックスをしたがっているのだと理解してしまいます。そして、前半のクライマックスである二人のセックス・シーンへ。『ハポン』と同様、ここで映画がいよいよ後半へ突入するということを示すような、音楽が使われた印象的なシーンです。とくにカメラワークがすごいことになっています。

 アナに罪を打ち明け、自首するという選択肢を考え始めるマルコス。一方の妻は、数日後に予定されている巡礼に自分たちも参加しようと言いだします。彼女は巡礼に行けば何かが変わると考えているようですが……このあとどうなるかは、いつも通り実際に見てのお楽しみに。はっきり言って、すごい展開が待っています。

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 それでは、ここからは作品を通しての感想を。

 まず、先ほども書いたように、本作はとにかくその性描写ばかりが言及される作品ですが、性描写の過激さ自体は『バトル・イン・ヘブン』にとって本質的な要素ではないでしょう。『ハポン』の感想でも書いたとおり、レイガダス監督はセックスを現実に生きている人間が日常的に行う行為として捉えているようですから、「過激に見せよう」という意図はなく、「ありのままの現実を見せよう」としているだけなのだと管理人は思っています。

 それよりも、自分にとってこの作品から感じた最大のテーマは「救い」でした。作品の最初から最後まで、マルコスは一貫して子供を死なせてしまったことに対する罪の意識を持ち続けているように見えます。それを打ち明けて、救いを得ようとした相手がマルコスにとってはアナでした。
 しかし、実際のアナは、マルコスの気持ちを誤解したわけです。彼女はセックスによってマルコスを慰めている気になっていたのですが、おそらくマルコスがアナに求めたのはそうした肉体的な慰めではなかったはずです。だから彼は、アナとセックスをしただけでは救われず、その後でも自首を考えるのでしょう。

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 このようにアナに救いを求めたマルコスに対して、妻は巡礼に救いを見出そうとしています。巡礼はもちろん宗教的なものですが、本作には『ハポン』同様、宗教性を感じさせる描写が何度か出てきます。とくに、家でマルコスが妻とセックスするシーンでは、イエスの肖像画が。つまり、『バトル・イン・ヘブン』では人間とのつながりによる救いと神とのつながりによる救い、二つの選択肢が描かれていることになると思います。そう言う一方で、マルコスはアナの中に、聖女の姿を求めていたんじゃないかなとも思っていたりもするのですが。

 いずれにしても、罪の意識に苦しむ人間が、いかにして救われることができるのか?というきわめて普遍的な問いが本作では扱われているのだと思いました。こうしたテーマ自体はすでに様々な映画で取り上げられていますが、レイガダス監督の真骨頂は、決して説明的なことはしないという点にあります。スクリーンに映し出される映像を観て、こちらがどう感じるかにすべてがゆだねられていると言ってよいでしょう。本作の終盤から何を感じ、考えるのか――

 そうして、物語は一気に加速していきます。本当に後半の展開はすごい、素晴らしいと言うしかありません。あの終盤、レイガダス監督はベルイマンに並んでいました。

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 最後になりますがラストシーン。オープニングと比べての、二人の表情の違い、交わされる言葉が、二人の魂が救われたことを意味している、そう管理人は感じました。ここの描写は本当に鳥肌が立ってしまいます。

 使われる音楽とか、カメラワークとか、特筆するべき点はたくさんあるのですが、何よりもテーマ性とそれを表現しようとする映像に打ちのめされた作品。『ハポン』もいいけど、『バトル・イン・ヘブン』はもっといいです(そして『静かな光』は最高です)。DVDはUK版が発売されています。興味のある方はぜひ!

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本作の監督インタビューを和訳した「その2」はこちら!
http://planeta-cinema.at.webry.info/201205/article_6.html

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