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zoom RSS 『昔々、アナトリアで』 ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督 その1

<<   作成日時 : 2012/07/31 21:42   >>

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今回は、昨年のカンヌで審査員グランプリに輝いたヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督の新作『昔々、アナトリアで』を紹介します。ジェイラン監督の最高傑作との呼び声も高く、期待して観たのですが、いやはや期待に違わず素晴らしい作品でした(・∀・ とにかく上質な一本。

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『Once Upon a Time in Anatolia』(2011)
原題『Bir zamanlar Anadolu'da』
映画祭上映タイトル『昔々、アナトリアで』
監督/脚本 ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
製作 トルコ、ボスニア・ヘルツェゴビナ
受賞歴 2011年カンヌ国際映画祭 審査員グランプリ

◎あらすじ
 暗闇に包まれた夜。殺人事件の容疑者を連れて、遺棄されたという男性の死体を警官たちが捜索している。その中には医者、検察官もいる。容疑者の証言をたよりに、彼らは車に乗って死体が遺棄されたという現場を探していくが……。

◎感想
 ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督の旧作は一通り紹介してきましたが、待ちに待った新作をようやく観れました(・∀・ 『Once Upon a Time in Anatolia』という英題が印象的な、『昔々、アナトリアで』という作品です。きわめて評判が良いので楽しみにしていたわけですが、観終えてみれば、評価の高さも納得の逸品でした。『五月の雲』も好きなのですが、完成度まで考慮するとやはり本作が今のところベスト作品でしょうか。

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 本作は大きく前半と後半の二つに分けることができます。前半は、夜のアナトリア平原で死体を探す捜索隊の様子が描かれます。この捜索隊には、医者(本作のほぼ主人公)・検察官(彼もメインキャラ)・警部をはじめとした警官たち、そして遺体が埋められた場所を唯一知っている容疑者がいます。この容疑者の証言をたよりに一行は広大な平原を車で移動しながら捜索するわけですが、予想通り?遺体はすぐには見つかりません。

 さて、あらすじだけ見ると、本作は殺人事件の顛末を追うサスペンス映画のように思われるかもしれませんが、ジェイラン作品だけあって、そうした殺人事件の真相究明や遺体の捜索そのものは作品の核心的要素になってはいません。実際、この殺人事件については、多くが明らかにされないままに終わります。
 そうではなくて、作中で焦点が当てられているのは捜索に参加している男たちです。前半部のほとんどは、彼らが車の中で雑談をしたり、捜索現場で思い思いの言葉を語るシーンから構成されています。一つ一つの発言が積み重なって、捜索に参加している男たちがどのような人間であり、どのような人生を歩んできたのかが示唆されます。ジェイラン監督のまなざしは、事件よりも人間に向けられていると言えるのではないでしょうか。

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 そうして遺体が見つからないまま真夜中を迎えた一行は、近くの村の村長の家で休ませてもらうことに。朝になって、ついに遺体が発見され、物語は後半へ。

 後半では、平原から街に戻った男たち、とくに医者と検察官を中心に物語が展開していきます。ここにきて作品はもはやサスペンスの外見さえも捨てて、一気に人間の心に切り込んでいきます。が!もちろんここからは観てのお楽しみに。後半の素晴らしさは有無を言わせぬものがあります。

 それでは、いつも通り作品全体についての感想を。

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 まずはなんと言っても、上述した本作の核心である会話です。これが本当に素晴らしい。現実の生活でも、会話にはその人の人生経験が言葉の端々に現れると思いますが、本作が描いているのはまさにそれです。安い映画のキャラクターのセリフは薄っぺらく感じるものですが、その原因の一つは、キャラクターのそれまでの人生がまるで感じられないからではないでしょうか。本作の登場人物たちのセリフは、彼らがこの捜索の夜までに何十年というそれぞれの人生を生きてきたことを感じさせてくれます。警部の家庭の事情、検察官が語り始める友人の妻のエピソード、医師の過去……彼らが自分の話をするときには「事実」であるがゆえの重みがあり、それが作品に強烈なリアリティを与えています。
 とくに、検察官が医者に語る友人の妻のエピソードは印象的。後半の医者と検察官のやりとりは本作の中でも最高です。脚本の出来がとにかくいいということになるのでしょう。

 このことに関連して言えば、今回もジェイラン監督は多くを語りません。殺人事件の真相はもちろん(DVDで観た人は、鑑賞後にまたオープニングを見直すでしょう)、それぞれの登場人物の過去などは決して完全には明らかにされません。鑑賞者は、それをキャラクターのセリフから想像しうるだけです。この寡黙さが絶妙でした。

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 他には、映像面もなかなか。前半はほとんど夜のシーンで暗く、後半は街の中なので、自然や光の美しさはあまりないのですが、ところどころハッとさせる映像があります。シネスコということもありますが、ジェイラン監督作品のなかでは一番洗練されているような気がしました。けれど本作に関しては、やはり脚本の方を評価したくなります。

 総じて言えば、これまでの作品通りとても静かな作品で、遺体捜索の話にもかかわらず、盛り上がるような箇所はありません。しかしながら、人間への洞察は今まで以上に深いものになっており、ジェイラン監督の最高傑作と言われるのも納得の作品になっていると思います。DVDはイギリス、アメリカ、ドイツ、フランスの各国版が発売されています。管理人が持っているイギリスuk版は二枚組で、メイキングや監督インタビューも収録されています、ぜひ(・∀・

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本作の監督インタビューを和訳した「その2」はこちら!
http://planeta-cinema.at.webry.info/201207/article_5.html

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