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zoom RSS 『アジャミ』 ヤロン・シャニ&スキャンダー・コプティ監督 その1

<<   作成日時 : 2012/10/10 02:10   >>

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かなり更新が滞っていましたが、ようやく一本更新できました(・∀・; 今回紹介するのは、カンヌでカメラドール(スペシャル・メンション)、アカデミー外国語映画賞でノミネートと高い評価を受けたイスラエル映画『アジャミ』です。困難な現実を映し出す秀作。

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『Ajami』(2009)
映画祭題『アジャミ』
監督/脚本 ヤロン・シャニ&スキャンダー・コプティ
製作 ドイツ・イスラエル
受賞歴 2009年カンヌ国際映画祭 カメラドール スペシャル・メンション
    2010年アカデミー賞 外国語映画賞ノミネート
◎あらすじ
 イスラエルの貧困街、アジャミ。そこでは、おもにユダヤ教徒とアラブ教徒が暮らしている。全五章、異なる人物の視点から、一つの物語が語られる。

◎感想
 いやはや、一ヶ月以上更新が空いてしまいました(・∀・; 年内はこのまま忙しい感じになりそうなので、しばらく更新は不定期になりそうです(でもなんとか東京国際映画祭は行けそうです!)。
 今回取り上げる『アジャミ』は、気がつけばもう3年前の作品なのですが、カンヌやアカデミー賞で話題になった(ほかにもテサロニキでグランプリ!)ということで、ずっと観たいと思っていた一本。イスラエルの現実を見つめようとしている作品だけあって、軽い映画ではないですが、きわめて良質であり、良心的な映画でした。

 本作は、章ごとに主人公(視点)を変えて一つの物語が語られるというスタイルを取っています。観ればすぐに章ごとのつながりは分かるかと思いますが、あえてぼやかして(笑)、各章のあらすじを紹介するとこんな感じになります。

・第一章
 叔父がギャングの一員を殺してしまい、復讐のために自分たち一家も命を狙われることになってしまったオマールと弟ナスリの物語。オマールは、有力者に会って和解の道を模索するが、そのためには大金が必要になってしまう。

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・第二章
 病気の母親の手術費を稼ぐため、パレスチナ難民のマレクは、イスラエルに不法滞在してレストランで働いている。ある晩、彼は同僚の家で「白い粉」を見つけてしまう。翌日、その同僚が遺体で発見されたとマレクは知らされる。

・第三章
 妻子に恵まれて、警官として働くダンド。しかし彼の心にはいつも、行方不明になって数年が経つ弟のことがあった。情報提供を募っても有益な情報が得られないなか、ダンドの携帯が鳴って……。

・第四章
 ビンジは弟が事件を起こしたと聞いて、実家に戻るが、自分自身も警察に拘留されてしまう。さらに自宅に帰ると、友人が弟からの預かり物を持ってくる。

・最終章
 キリスト教徒の女性は、イスラム教徒の男性との交際を父親に反対される。そして、物語の全貌が明らかになる。

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 それぞれの章がつながって、一つのエンディングに向かっていく本作。この感想を書くためにもう一度簡単に観直したのですが、初回のときには様々な要素を見落としていたことに気付きました(英語字幕ということもあって、ぼんやりしていているとダメですね)。それを踏まえて言えば、各章がきわめて上手くリンクされているなと思います。大きなどんでん返しがあるという訳ではないのですが、丁寧に練られた脚本だと感じました。この脚本の良さが、本作の一つのポイントでしょう。

 脚本・物語に関して言えば、つながりだけでなく、個々の物語がイスラエルの現実を写し取ろうとしている点もとても興味深かったです。ユダヤ教徒とイスラム教徒の対立であるとか、貧しさ、あるいは暴力。舞台となるアジャミの街は、ネットで検索すると貧困街だなんて言われている場所です。本作を観ると、そこで暮らす人々が暴力や憎悪を身近に感じて生活しているのだろうと想像せずにはいられません。第三章の冒頭、アラブ人の青年たちを注意したユダヤ人のおじさんが(意図的ではないにせよ)殺されてしまう部分は印象に残ります。

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 また、ユダヤ教徒とイスラム教徒の対立については、章ごとにキャラクター・視点を変えたことによって、片方の側に立つことなく物語を描くことができたと言えます。ただ、ほとんどの主要キャラクターは若いこともあって、それほど自分とは異なる宗教に対して不寛容ではないと感じました。その点で不寛容を代表しているのは、たとえば最終章で娘の交際に反対する父親。彼と娘の口論はこんな感じ。

 娘「彼を愛してるの」
 父「どこかおかしいんじゃないのか」
 娘「彼だって人間なのよ」
 父「いや違う」
  「みんな宗教が同じ人間と結婚するんだ」


でも、きっとこの父親だけが異常というわけではないでしょう。むしろ、ユダヤ教徒とイスラム教徒のカップルの方がイスラエルでは「異常」なのであって、多くの人々はこの父親のように考えているんじゃないかと思います。

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 このように『アジャミ』は、もちろんこの作品だけから判断してはいけないのですが、イスラエルの現実を描こうとしています。そして、そのかぎりにおいては、思うところのある作品でした。とくに、ラストがもたらす虚無感はとてもリアルで、「現実は残酷なものだよな」と感じさせるに十分なものでした。それぞれのキャラクターの人生を動きつつ、それが絡まり合って一つの結果を生むというストーリーからは、「運命」という言葉を思い浮かべてしまいました。

 ただし管理人はどうしても、単なる現実の提示だけでは満足できないところがあります(笑)。それは現実以上の「何か」を映画の中に求めてしまうせいなのですが、そういう意味では『アジャミ』の結末はやや物足りない。もちろん、あえて監督たちの思想や感情を投げかけず、現実描写に徹底したのかもしれませんが……。ここはいつも通り、完全に管理人の好みの問題です(笑)。
 きっと次回作以降も、この監督コンビは芸術性うんぬんではなくて、現実を切り取っていくスタイルで勝負していくと期待しています。楽しみに待ちましょう。

 本作はおそらく、なら映画祭で上映されただけなので、多くの方が観るチャンスがないまま通り過ぎてしまった作品だと思います。しかし、そうなるにはもったいない一本。DVDはuk版とus版が発売されています、ぜひ。

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本作の監督インタビューを和訳した「その2」はこちら!
http://planeta-cinema.at.webry.info/201210/article_2.html

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