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zoom RSS 『メコンホテル』 アピチャッポン・ウィーラセタクン監督

<<   作成日時 : 2012/11/30 02:51   >>

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アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の最新作『メコンホテル』が、東京フィルメックスで上映されました。「ドキュメンタリー」と「フィクション」の境界線上を漂いながら、昨年タイで起きた大洪水やメコン川など、監督のタイへの想いを感じる心地よい一作です。

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『Mekong Hotel』(2012)
映画祭題『メコンホテル』
監督 アピチャッポン・ウィーラセタクン
製作 タイ・イギリス

◎あらすじ
 メコン川に面するホテルで、『エクスタシー・ガーデン』という映画の撮影が行われている。映画は、人肉を食べる幽霊の母親と人間の娘の物語のようだ。リハーサルの合間に、俳優たちは思い思いの会話をしている……フィクションとドキュメンタリーの間を交錯する一作。

◎感想
 東京フィルメックスで、ウィーラセタクン監督の最新長編(短いけど)『メコンホテル』を観てきました。メコン川の流れのように?穏やかに時間が流れていく、雰囲気の良い作品でした。楽しみにして観に行ったわけですが、やはり監督は期待を裏切らない素敵な映画を見せてくれますね。

 まず、『メコンホテル』の構成を簡単に書いておきましょう。あらすじにも書いたとおり本作は、「怪奇映画『エクスタシー・ガーデン』の撮影風景を記録した作品」という「体裁」をとっています。そのため、実際に映画のワンシーンをリハーサルしている(あるいは撮影している)部分と、リハーサルの合間に交わされる会話の部分という、二つの部分から『メコンホテル』は構成されることになります。言いかえれば、俳優たちが「演じている」部分と、「演じていない」部分から成るということになるでしょうか。

 ちなみに、この『エクスタシー・ガーデン』という映画は、ウィーラセタクン監督が脚本を書いたものの実現されなかった実在の企画で、人間のはらわたを食べるポープ・ゴーストという幽霊の物語です。フィルメックスの解説によれば、ポープ・ゴーストの母親が人間の娘を食べてしまうという話になる予定だったとか……ともかく、そういうわけで『メコンホテル』にはその母を演じる女優と、娘を演じる女優が登場します。それに娘と恋に落ちる青年役の男性を加えれば、それで出てくる俳優役は全員です。

 作品を二つの部分に分けましたが、まず『エクスタシー・ガーデン』のシーンが演じられる、いわば「フィクション」の部分について書きましょう。俳優たちが物語のリハーサルをしている風景(実際には本番の撮影なのかリハーサルなのか区別がつかない)は、スクリーンに映されることによって即『エクスタシー・ガーデン』という映画のワンシーンになり、私たちはこの映画の一部分を観ている気分になります。言ってしまえば、『メコンホテル』を観てるのか『エクスタシー・ガーデン』を観てるのか分からなくなるという感じで、面白かったです。
 この『エクスタシー・ガーデン』という怪奇譚自体については、それほど言及する気もないのですが、魂という言葉が出てきたり、幽霊が乗り移ったり、そもそも幽霊が出てくるという点で、『ブンミおじさんの森』を彷彿とさせます。

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 そして、問題となるのが「演じていない」部分。ここでは、前述したように俳優たちの私的な会話や、監督とギタリストの会話などが記録されています。『メコンホテル』のメインはおそらくこちらの部分だと思うのですが、この部分について感じたことが二つありました。一つは、会話の内容。もう一つは、この部分は本当にドキュメンタリー?ということ。

 一つ目の会話の内容ですが、これが本作の核心ではないでしょうか。会話には大きく分けて、「過去」についての話と、「いま」起きているタイの洪水の話題がありました。この映画は2011年の10月、タイが大洪水に見舞われていた時期に撮影されたそうですが、ボートの値段がどんどん上がっているといったリアルタイムな会話が出てきます。その一方で、母親役の女優は、自分が若かった頃の思い出を語ったりします。タイの今と、タイの過去――自分にはタイ(そしてタイの人々)にとってメコン川がどういう存在であるのかは分かりませんが、監督が本作を撮るさいにタイを想っていたということ、これは間違いないんじゃないかなと思います。後述するように、本作はすごく「心地よい」映画なんですが、その一因がこの想いにあると自分は勝手に納得しています。

 それから、二つ目。この部分も本当にドキュメンタリーなの?ということ。実際に『エクスタシー・ガーデン』という映画を製作しているならまだしも、『メコンホテル』を「架空の映画を撮影する人々の様子を描いた作品」と考えるならば、登場する人々はこの部分でも演技をしていることになるでしょう。たとえば、「幽霊の母親を演じる女優を演じる」というように。そうすると、前述したような「演じていない」部分はこの映画のなかに本当にあるのだろうか、あるいは本作はドキュメンタリーなのだろうか……という疑問が浮かびますが、そうした質問を上映後のQ&Aでズバッと聞かれた方がいたようですね。自分はQ&Aのない回で残念だったのですが、フィルメックスの公式サイトに様子がアップされています。監督の答えも興味深いです。

 それでは最後に、全体の感想を一言。本作はとても「心地よい」映画でした。その心地よさを生み出している最大の要因は、映画の冒頭から流れるギターでしょう。60分間、ほとんど途切れずに流れるしっとりとした旋律が、胸に響きました。監督のタイへの想い、ギター、そしてメコン川――いい映画になるには十分すぎる組み合わせです。最近ちょっと忙しくて疲れていたのですが、心が休まるひとときを過ごせました。61分という上映時間は短い気もしますが、いわゆる長編映画とは少し違うので、ちょうどいいかもしれませんね。

 テーマ、そして上映時間から一般公開の可能性は低いと思いますが、特集や海外版などでまだアクセスする機会はありそうな作品です。『メコンホテル』、いい映画でした。

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本作に関する監督インタビュー邦訳はこちらから!
http://planeta-cinema.at.webry.info/201211/article_5.html

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