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zoom RSS 『Ashes』&『メコンホテル』 アピチャッポン・ウィーラセタクン監督インタビュー

<<   作成日時 : 2012/11/30 03:24   >>

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2012年に発表されたアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の新作、『Ashes』と『メコンホテル』。この二つの作品について聞いている監督インタビューを翻訳してみました。映画祭で鑑賞された方、あるいは『Ashes』は無料配信中ですし、実際に鑑賞された上でぜひご一読を。

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『Ashes』についての紹介・感想記事は「こちら」、
『メコンホテル』についての紹介・感想記事は「こちら」からどうぞ。

また、インタビュー原文は「こちら」です。

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――監督が行ったショート・フィルムのマスタークラスで二つの秘話をお聞きしました。その一つは、「恋をしているときに映画は作るな」という戒めでしたね。
 (笑)はい……私は自分がどうしてキャリア志向な性格をしているのか分からないのですが、その一方で幸せを求めてもいます。ですから、そこに葛藤が生じることになるんです。恋に落ちているとき私たちは幸せを感じますし、映画を撮っているときにも幸せを感じます。この二つの幸せは互いにぶつかりあうものです。どちらも時間や献身、お金が必要になりますからね。だから私は若い映画監督たちに「恋に落ちるな」と言ったわけです。もちろんこれは半分冗談ですよ。恋に落ちることは避けようと思って避けられるものではありませんから。でも、どちらも両立させるということができますか?

――この話は、1970年代のゴダールの仕事に対する有名な話を思い出させます。私生活と職業生活を一つにしようとしていたという。
 そうです、そうです。映画を製作しているあいだは、家から離れて旅行をすることが多くなります。この数年間、私自身何度もそうしたことを繰り返してきましたし、それによって家をありがたく思うようになりました。それで最新作は親密さが増したというわけです。
――『Ashes』は確かにそう感じられます、ほとんどホーム・ムービーのようです。
 そのとおりです。

――もう一つの秘話として、インスピレーションを見出すためにハリウッド映画を観に行くともおっしゃっていましたね。とはいえ、『ブンミおじさんの森』の猿のスーツや、『メコンホテル』のはらわたを食べる幽霊のことを思えば驚きませんが。
 早い頃からハリウッド映画に魅了されてきました。『E.T.』から最新の作品まで、ハリウッド映画には特殊効果があるからです。(ハリウッド映画を観ることは)映画の未来をのぞきこむようで、ハリウッドはそうした特殊効果を長い時間をかけて完成させてきましたから、競争は不可能ですね。その意味では、発展途上国でハリウッド映画を真似することはできないと思います。しかし、ハリウッド映画は動く映像の未来を見せてくれるので、私は楽しんで観ています。それがひらめきを与えてくれるんです。

――『メコンホテル』について教えてください。本作はきわめて小規模に製作されたように感じました。クレジットによれば、撮影・監督・編集など、監督がほとんどのことを一人でこなしたようですが……。
 (笑)はい。私にとってはとても面白い仕事の仕方でしたね。大抵、他の映画では、私たちはそれぞれ違うホテルに泊まっていて、出かけて撮影をしては、夕方にまた戻っていくことになります。しかし今回はロケ地での撮影がありません。私たちが泊まっている場所こそが唯一の撮影現場ですから、製作に伴う面倒がなくなりました。あの場所が映画を製作する場であり、生活の場となったわけです。朝起きたら「よし、このシーンを撮影しよう」と言えるのは、とても開放感がありましたよ。ロケ地での撮影を完全に排除した『ドッグヴィル』を、ラース・フォン・トリアーがどういう風にスタジオで製作したのかが分かりますね。

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――監督はキャストやクルーと一緒に生活されたわけですね。
 そう、文字通りセットでの生活です。
――そのセットというものが、小さな物語と実現されなかったプロジェクトという異なる要素をまとめていますね。まるで同じホテルの違う部屋のように。
 おっしゃる通りです。

――同様に映画をまとめる要素として、冒頭から一貫して流れるギターの音楽があります。このアイディアはどこから?
 あのギタリストと私は高校の同級生だったんですが、20年以上会っていなかったんです。しかし彼と再会することがあって――私は彼と会うことはもうないだろうと思っていました!――私がいま暮らしているタイの北部で会ったんです。彼はミュージシャンになっていましたが、これはとても特別なことだと思いました。というのも高校時代、私たちはとても仲が良かったからです。ですから互いに近況について知りたいことがたくさんあったわけで、それがほとんどこのプロジェクトを実行するための企てになりました。私は新作でやりたいと思っていることを説明し、ヴァンパイアやそうした類の物語になると伝えました。彼は音楽の下書きを用意して、近況を伝えあうための手段として共同で作業を進めました。

――このリラックスさせてくれる音楽が、ヴァンパイアやら幽霊の映画を作りたいと言われて思いついた音楽なんですか!?
 そうなんですよ!でも、正確にはヴァンパイアというより、彼には数年前に書いて実現しなかった『エクスタシー・ガーデン』という作品について話したんですが。それで、「この物語から君は何を感じるか」と私が尋ねたことがアイディアのベースになっています。

――サウンド・デザイナーとの作業についてはどうでしょう?監督のサウンドトラックはいつも素晴らしいものになっています。
 私のサウンド・デザイナーもアーティストなんです。だから彼は日々の音の価値、とりわけ周囲の環境や街の音の価値について理解しています。彼がカットしてしまいたかっただろうと私には思われる音もたくさんあるのですが、そうした音を彼は強調しています。つまり私たちの作業はとても協力的なもので、彼とはたくさん仕事をしていますね。

――サウンドはロケ地のものなのか、あとから組み込まれたものなのか、どちらでしょう?
 『メコンホテル』はすべてロケーションに基づいています。ただ『Ashes』の方は違って、一日かけていじってみたかったので、すべてのサウンドが一日のうちの様々な時間に私の家で録音されたものです。

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――『Ashes』はLomoKino(ロモキノ)で撮影されていますが、デジタル撮影されたショットで終わります。なぜこのコンビネーションを選んだのでしょう、なぜこの終わり方なのですか?
 はじめはそうしようと思っていなかったのですが、最終的に二つを一緒にすることができるか試してみたくなったんです。そして両立したと思っています、デジタルとアナログは共存します。変容(トランスフォーメーション)について語る映画のなかでは……なんと言えばいいのでしょうか、何かが消滅していくような、とても絶望的なシチュエーションのなかでは(両立する)。消え去った何かについての記憶であるとか。花火が映るラストシーンはお葬式なんです。このことはメディアそのものについても何かを語っていると思います。メディアはいま変容しつつあるか、死につつあります。
――タイという国についても?
 そう思います。というのも、タイは悪い意味でとても興味深い時期を通過していると思っているからです。タイは……タイはいわばゆっくり沈みつつある船のようなものです。

――パルムドールを受賞したあとでタイに戻ったとき、国際的に活躍するタイの映画監督たちに対する雰囲気は変化しましたか。
 そうですね、変わったとは思いますが、長続きはしませんでした。このことが、タイの映画文化がきわめて未熟であることを暴露しています。海外の受け止め方や評価ばかりが問題なのです。タイに戻ったあとで本当に多くの広告やテレビ番組のオファーがきましたが、うわべだけのものばかりなので断りました。

――監督は多様なプロジェクトに携わっていて、今回は『Ashes』という短編、実現されなかった長編の計画に基づく短めの長編作品『メコンホテル』も製作されました。これからもこのような多様な仕方で作品を作っていくのか、それとも長編作品が目標であり、短編などは製作資金を得る手段なのか、どちらだとお考えですか。
 長編映画は決してお金を生み出しません。ですから自動的に、長編以外のものを芸術のなかに見出すことになります。でもそれは、そういうふうに強制されているとか、必死になっているというわけではありませんよ。そうした(長編以外の)ものに私は本当に関心を持っていますし、それらは私に変化をもたらすような刺激を与えてくれるんです。長編映画を製作すると、二年か四年か、長い時間がかかります。また人間には変わりたいという衝動や、すぐに何かをしたいという衝動があります。短編を作るということは、容易なことです。短編はいつでも短いからね!しかし、そうした短編作品を作るということが、長編映画を作りたいという気持ちを引き起こします。だからこれは一つのサイクルで、それぞれが他方を駆り立てるということですね。

――『エクスタシー・ガーデン』を長編にすることは考えられますか、それとも『メコンホテル』での思索は監督を満足させましたか。
 そうですね、後者だと思います。というのも、『メコンホテル』は『エクスタシー・ガーデン』がどのようなものになったのだろうかを見せてくれましたから。この女優がどんな仕方でこうしたセリフを言うのかとか……十分ですね。

――『Ashes』に戻りますが、作品を観るまではこのカメラ(ロモキノ)がどういうものか知らなかったので、きわめて低いフレームレートに驚きました。ほとんどスライドショーのような効果を生み出していますね。この動画と静止画の境界線は、マルケルの『ラ・ジュテ』を思い出させます。この効果を予測していたんですか?
 いえ、予測していませんでしたね。期限があったので、もし時間があればフィルムを現像に回して実験できたのですが。しかし『Ashes』で私がとったやり方の場合、カメラは寛容であること、何ができるか分からないまま、作品をミステリアスなものにしておくことを求めてきます。きっとこれが最良の方法なのでしょう、何も期待せずに、しかし何が起きるのかだけは注視する、と。

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