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zoom RSS 『シモンの空』 ウルスラ・メイヤー監督 その2

<<   作成日時 : 2013/02/17 03:40   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

つづいて『シモンの空』についてのウルスラ・メイヤー監督インタビュー邦訳です。いくつかのインタビューから、面白いものを選んで訳してみました。本作を作るきっかけなどについて話しています。WOWOWでご覧になった方はぜひ読んでみてください(・∀・

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本作の「その1(紹介・感想編)」はこちら。
http://planeta-cinema.at.webry.info/201302/article_3.html

今回は以下の三つのインタビューから、取捨選択して訳しています。
http://www.cineuropa.org/ff.aspx?t=ffocusinterview&l=en&tid=2373&did=218637
http://www.moveablefest.com/moveable_fest/2012/10/ursula-meier-sister-interview.html
http://www.nisimazine.eu/Ursula-Meyer-an-empiricist-guided.html

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――『シモンの空』はどのように生まれたのでしょう。
 いくつかのきっかけがありました。私は前作『ホーム』に出演していたケイシー・モッテ・クラインとまた仕事をしたいと思っていたんです。前作のときにはまだ7歳でとても小さかったわね。彼との作業はとても実験的で、直感的なものでした。彼は真っ白なキャンバスみたいなもので、それが魅力的でした。それで、さらにさきのステップへと踏み出したいと思ったんです。彼にはいくらかの俳優が持っている気品があり、とてもパワフルな何かを持っています。
 同時に、スイスアルプスのふもとにあるモンテー付近の工業地帯にも長年興味を持っていました。あの場所は、現在の世界を映す証人のようなものです。(スイスのアルプスとその下にある工業地帯という)この垂直の関係の中には強烈なものがあります。上の世界には(この映画の原題は「上からの子供」という意味である)、優雅なスキー・リゾートがあります、まるで小さなディズニーランドのような。一方で下の世界は、灰色の、少し寂しい世界です。このことが、盗みをするためだけに上の方へと上がっていく、下の世界の少年という物語を思いつくきっかけになりました。

 それから脚本の執筆を始めて時間が経ってから、ある記憶がよみがえってきたんです。私はスイスのジュネーブの近くで育ちました。フランスのスキー・リゾートにもよく行っていました、小さなところで、アルプスのなかではありませんが。そこでたくさんの子供たちとグループを作っていたのですが、ある日スキーの先生が、一人でいた12,3才くらいの少年に注意を集めてこう言ったんです。「この少年を見なさい、彼は泥棒だから持ち物には気をつけるように」。私はとても驚きました。というのも、彼の見た目は私たちとそう変わらず、スキーをする格好だったからです。そうした高価なものを身につけていながら、彼は盗みをしたのだと。私のイマジネーションは刺激されて、この少年は何者なんだろうとか、なぜ盗みをする必要があるのだろうと考えました。最終的に、少年はそのスキー・リゾートに立ち入り禁止になりました。この記憶が脚本の執筆中によみがえってきたんです、執筆前にではなくて。ですから、私の潜在意識が働いていたのでしょうね。

――ただし監督は、ありふれた描写を逆転していますね。(普通は富裕層のいるアルプスを開放的な場所として描くが)監督は下の世界よりも山頂の方を息詰まる場所として描いています。
 アルプスの美しさを示すパノラマ写真のように山々を撮影することは避けました。上の世界では、つねに少年にぴったりと近寄って、フレームを動かさないようにしています。一方で下の世界は開放感があって、ずっと楽に呼吸ができる場所です。これは、ある意味では、二つの領域のバランスを取り直すということでもあります。

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――『シモンの空』には、『ホーム』同様、「奇妙な家族」というアイディアがあります。このテーマはいつ生まれたのですか。
 とても早い時期ですね。この作品を、シモンとルイーズの見せかけだけ道徳的なサスペンスにしてしまいたくはありませんでした。彼女はシモンの盗みについて知っているだけではなくて、実際それに関与してもいます、とりわけ映画の後半では。二人ともある種のユートピアに住んでいるのですが、それは『ホーム』と少し似ているかもしれませんね。彼らはそれぞれのルールにしたがって、別々の仕方で生活しようとしているのです。ケイシーとレア・セドゥは、一緒にいると素敵です。二人ともカメラの前で同じ優雅さを見せてくれます。

――レア・セドゥも早い段階から起用を決めていたのですか。
 いいえ、彼女にしようと思ったのはずっと後のことでした。でも彼女に会ったとき、それまで私には見えていなかったルイーズというキャラクターの一側面が見えてきたんです。それが脚本の完成を可能にしました。単なる社会的な映画から一歩踏み出して、想像力にあふれたおとぎ話へと作品が発展していけたのです。

――他のキャラクターからは、おとぎ話というイメージはあまり感じられないのですが……
 映画では、見せていないことが、見せていることと同じくらい重要なのだと思います。それはまさに、脚本を執筆しているときや監督しているときになされる選択です。たとえば、下の世界では、ルイーズの恋人を除いては、大人が出てきません。彼女は小さな子供たちに囲まれるだけですが、それは白雪姫と七人の小人のようです。

――とはいえ、スキー・リゾートの舞台裏の描写はとてもリアルですね。どのようにリサーチしたのでしょう。
 ある冬に、山の上にフラットを借りたんです。そしてスキー・リゾートの警察に昼も夜もついていったり、季節労働者たちに会ったりしました。彼らは難しい環境の中で生活していて、ときにはレストランのオーナーたちに搾取されてもいました。でも彼らには、あの場所以外に働く場所が見つけられないのです。警察はすっかり参っていて、つねに必要なセキュリティ・チェックをするということができていませんでした。

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――前作からは何が変わったのでしょう。
 『ホーム』はきわめて緻密な作品で、脚本は細部まで書き込んでいました。『シモンの空』はもっと自由な作品です。それから、『ホーム』はその脚本のせいで準備が必要になりました。高速道路や、たくさんの車など……『シモンの空』ではたくさんの子供たちを撮影しました。彼らと一緒にいる場合、すべてをコントロールすることは不可能です。そういうわけで、監督としての自分の直感をより頼りにせざるをえませんでした。

――最近では、過酷な少年時代を送る人間を描く作品は、美的な面に関しても映像を粗雑なものにするのが典型的です。しかしこの作品はとても鮮明で美しい映像スタイルを採用しています。これは他の作品に対する監督の応答なのですか。
 素晴らしい撮影監督(アニエス・ゴダール)と仕事ができて、私は本当に幸運です。彼女は前作でも撮影をしてくれました。彼女とはカフェで話し合ったのですが、普通なら技術的なことについて話し合うときには一時間くらいで済むと思うのですが、私たちは多分四時間以上話していたと思います。二人とも、徹底的に話し合うのが好きなんですね。このショットはどうしよう、あのショットはどうしよう、どうやってこのセットを撮ろうか、と。カメラは映画にとって本当に重要です、観客が感じるものを映し出すのですから。それで、たくさん話し合う必要があったのです。私たちは青を伴った自然主義から離れようとしました。それからポストカードみたいな映像を撮ることも避けながら、この奇妙な世界へのアプローチを見つけ出そうとしたんです。
 私にとって、映画とはすごいものです――俳優がいて、映像があり、音がある。それで十分です。私たちは映画というものについて考えないようにしました。映画について語らない。私たちは「あれを覚えているだろう……」とは言いません。それぞれの作品ごとに適切な唯一のアプローチを持とうとしているんです。

――『シモンの空』には、観客が嫌いになるような敵対者が明確にはいません。しかしながら、多くの登場人物はシモンに対して消極的に振る舞います。
 このシモンという少年は、多くの大人たちと出会います。そして彼らは、ときには彼のことを気づかうのです。彼はシモンにこう聞きますね、「どこから来たの?」、「何が欲しいの?」、「ここで何をしているの?」。でもスキーのシーズンが終わるころには、彼らはもとの生活に戻っていかなくてはなりません。大人たちにはこの少年を気づかうだけの時間や体力が残っていないんです。それは彼らが身勝手であるからというわけではなくて、彼らの生活が、この少年と同じように困難なものだからです。大人たちはシモンを助けようとしますが、それぞれに問題を抱えていてそれができません。たとえば、クリスティンという女性ははじめこの少年に好意を持つのですが、一度彼が盗みをして見つかると、彼を拒否するのです。

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――監督の作品には実験的な側面がありますが、『シモンの空』はどうでしょう。この作品によって達成すべき目標は何だったのですか。
 この作品もいろんな意味で実験的であると言えます。主要な目標は、嘘についての物語を語ることでした。しかし、それはとても難しいことでした。というのも、この映画では真実が後半になって明らかになるからです。真実はこの物語の重要な要素ではありませんし、作品自体にそれほど影響を与えもしません――最近の映画、とくにハリウッド映画とは違って。社会問題から始まる映画を作ろうと思っていました。しかし、映画が進んでいくにつれて、この作品は社会問題に関するものではなくて、愛についてのものだということが示されるのです。つまり、貧しい少年の物語ではなくて、二人のメインキャラクターの関係に作品は集約されます。

――女性監督として、女性であるということによって困難に遭遇したことはありますか。
 いいえ。スイスにはたくさんの女性監督がいますから、実際私はラッキーなんです。正直に言えば、私には文句は言えないですね。自由があり、素敵な男性たちと仕事もしています。でも、世界には困難な問題があることも事実です。たとえば、ベルリン映画祭では私が唯一の女性監督だったんです(※おそらくコンペではということだと思いますが……)。

――ベルリン映画祭で銀熊賞を受賞した感想は?
 とても嬉しいです。第一の理由は、賞をもらったこと自体、第二の理由は審査員です。マイク・リーは私にとって本当に素晴らしい映画監督なんです。アスガー・ファルハディとフランソワ・オゾンもそうです。こうした監督たちに選ばれて受賞したということに感動しました。この事実の方が、銀熊賞そのものよりも重要かもしれないですね。

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