『アンチクライスト』 ラース・フォン・トリアー監督 その2

というわけで、「その1」に続いて『アンチクライスト』の監督インタビューも再掲。「ロッテントマト」によるトリアー監督のインタビューを訳したものです。前回のままというのもつまらないので、少し訳を通じるような日本語に変えてみました(´∀`;

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なお、本作の「その1(紹介・感想編)」はこちら、
http://planeta-cinema.at.webry.info/201011/article_1.html
インタビュー原文はこちらからどうぞ。
http://www.rottentomatoes.com/m/1210830-antichrist/news/1833302/rt_interview_lars_von_trier_on_antichrist

結構楽しそうにインタビューを受けているイメージが原文から伝わってきました。
鬱病を乗り越えて、人柄がよくなったのかもなどと邪推してしまいます(・∀・;
つたない訳文なので、その楽しげなニュアンスが出せているかは分かりませんが、
監督のファンはぜひご一読あれ。

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――ホラー映画にふさわしいタイトルですね。
 我ながら、いいタイトルを付けたものだといつも思ってるよ。この映画は実際にはホラー映画でもないし、宗教的な映画でもないんだけど。だからこのタイトルがこの映画にふさわしくないとしても・・・・・・知ったことじゃないな!でもいいタイトルだ。

――『アンチクリスト』がここまで議論を巻き起こすと予想していましたか。
 いや、本当に思っていなかったよ。でもそれで結構。カンヌでは、あらかじめこの作品が好きか嫌いかを決めてしまってから観にきた人々がいたよ。ただ、ごくわずかな国では検閲が行われる予定なんだ。ヨーロッパではドイツだけなんだけど。アメリカはまだ分からないな。僕にとっては大した問題じゃない。

――ウィレム・デフォーの出演交渉はどのようにしたのですか。
 もともとは、若い人々の話を考えていた。けどウィレムの方から仕事がないか手紙で尋ねてきたんだ。僕の返事は「もちろん!」さ。彼はこの企画を始めるのにあまり気乗りしていなかったんだが、僕の妻が素敵なことをしてくれてね。彼女はこう言ったんだ。「あなたは役を引き受ける勇気もないのね!」。普通ウィレムにそんなこと言えないよ!でもそうして彼は参加してくれたんだ。

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――エヴァ・グリーンが妻の役を演じたがっていたというのは本当ですか。
 妻役を探すのには時間がかかった。それで、質問の答えはイエスだ。彼女はこの役を望んでいたから、もう少しで映画にボンドガールが登場するところだったんだ!僕らは議論を重ねたけれども、彼女のエージェントがきっぱりと反対したんだ。二ヶ月も無駄にして、気が変になったよ。無駄に二ヶ月も待っているなんて、普通できないよ。

――それでは、シャルロット・ゲンズブールの起用は?
 彼女が来て「私は何が何でもこの役が欲しいの」と言ったんだ。それで僕は彼女がずっと前から決断して、この役にこだわっているんだと思った。僕らには何の問題も無かった、まったくね。

――彼女は裸になることや暴力描写を気にしませんでしたか。
 脚本を読んで、それらのシーンをどのように撮るか議論したあとには、彼女の心には少しの疑いもなかった。素晴らしいことだ。だから彼女がカンヌで最優秀女優賞を獲得したことが、本当に、本当に嬉しいんだよ。彼女は実にシャイな人間だから、彼女の演技は勇気あるものだったと思う。

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――露骨な性描写についてはどうでしょう。
 僕らはポルノ俳優を使ったんだ。事実、おもしろかったんだけど、妻が夫に手淫を行って血が飛び出てくるシーンで、彼らは(血が飛び出したあとも)ずっと行為をし続けたんだ。僕には理解できなかったんだけど、そのとき誰かが教えてくれたんだ。ポルノでは監督に言われるまで、演技を止めてはいけないんだって!だからあの哀れな俳優には、驚くべきだよ・・・・・・。

――観客が暴力描写にショックを受けることを心配しましたか。
 そうだね、もちろんだ。しかし現実の生活から見て映画の全場面を考えてみると、どれも現実に起こりうる気がする。でもそれらがフィクションになると規制が生じるんだから、奇妙な話だね。

――あなたは鬱病に苦しんできました。この映画においてその経験は、どのようにしてあなたに影響しているのでしょう。
 自分のことを、この映画を通して俳優たちに助けられた老人のように感じている。僕は一番いい状態ではなかったんだ。だから、いつもなら楽しめることも楽しむことができなっかった。監督しながら、同時にカメラを操作することもできなかった。精神的な余裕がなかったんだよ。何年もセラピーのもとにいたからね。

――人々は再びあなたのミソジニー(女性嫌悪)を非難しました。あなたは奥さんに、映画についてどう思っているか聞いたりはしないのですか。
 聞かないね、僕は彼女を信頼していないから。というのも、彼女はずっと「どうしてあなたは憂鬱になるの?あなたは最高の映画を作ってきたのに」と言うんだ。それで僕が、「でも君は僕の映画を観てないじゃないか」と返すと、「そうよ、でも分かるわ」とくるのさ。おいおい!どうやって彼女を信頼できる?彼女は僕が人生でするすべてのことに対して、とてもポジティブなんだ。僕は妻をとても愛している。彼女は素晴らしい人だし、彼女がすべてを支えてくれているからね。そう、すべてだよ。だから、いま言った意味では彼女を信頼していないのさ!けど、それはいい意味でなんだよ。

――人々がこの映画を嫌悪することは心配ではないですか。
 それについては考えていないな。僕はある意味、自分自身を公的な人物だと捉えているんだ。どんな映画を僕は観たいだろうか?どのようにして怒らせられたいだろうか?そうすると、僕と考え方を共有してくれるような観客がいくらかはいるものさ、もちろん残りの観客はそうじゃないが。ありがたいことに、一部の人々は僕と同じようなリアクションをしてくれるんだ!多くの観客にヒットしそうな映画を製作できたり、観客がいつ笑うのか観察するために試写会をするようなハリウッド的な考え方は、僕には不可能だろうね。

――カンヌで批評家たちが、喋る狐を嘲笑したことに落胆しましたか。
 その上映には僕は参加しなかったんだよ。でも、その類の笑い声と、はじめからこの映画を嫌おうと決めている人間の笑い声の違いを聞き分けることができると思うな。

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――しかしあの狐は冗談では?
 いや、あれは僕がしてきたシャーマニズム的な旅に由来しているんだ。それは飛行機に乗ることとは訳が違うよ!そう、僕はまだ飛行機が怖いんだけど。ドラムのビートを聴いて、パラレルワールドに連れていってくれるトランス状態に陥るのさ。そこで僕はこの狐に話しかけたんだ、それには電話線が必要なんだけど。

――彼は何か言っていました?
 そうだね、最初に僕が会ったのは赤い狐だった。そして彼は断片に分かれていってしまったんだ。その後で、僕は他の狐のカップルに会った。小さな子狐を連れた銀色の狐たちだった。彼らは僕にこう言ったんだよ、「最初に会った狐を信じてはいけない」とね。面白かったな。

――あなたの映画はシャーマニズム的な旅なのでしょうか。
 そうだったら素晴らしいけれどね。シャーマニズム的な旅というのは、とても個人的なものなんだ。そこにはまったく宗教的なものはないが、しかし非常に愉快だね。

――では、あなたのシャーマニズムを表現する動物は何でしょう?
 カワウソかな、うん!決めるんじゃなくて、思いつくものなんだ。

――今後の予定は?
 分からないな・・・・・・本当に分からない。今はまだ新作を撮ることさえ考えられないよ。そこには何も無いからね。(※とはいえ新作『Melancholia/メランコリア』が2011年に公開予定!)僕はガーデニングが好きだから、予定としては今から庭に座るな。とても穏やかだよ。僕は本当に自然を愛する男だから、出来る限り自然の中で暮らしたいんだ。自然の中にいると、僕は安全を感じるね。

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