『エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPE』 ジョゼ・パジーリャ監督 その2

『エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPE』についてのジョゼ・パジーリャ監督インタビューを邦訳してみました。日本での劇場公開の可能性がなくなった以上、パジーリャ監督のインタビューを見かけることはあまりないと思うので、本作に興味のある方はご一読を。

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なお、本作の「その1(紹介・感想編)」はこちら、
http://planeta-cinema.at.webry.info/201112/article_1.html
インタビュー原文はこちらからどうぞ。
http://www.complex.com/pop-culture/2011/11/interview-jose-padilha-elite-squad-the-enemy-within/page/1

超話題作だからでしょうか、ネット上で見れる本作についてのインタビューが準備中もどんどん増えるという状況でした(・∀・; 面白い話があれば、その中からも少し引っ張ってきたいと思います。

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――『エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPE』(以下『エリート・スクワッド2』)の冒頭で監督は、「実際に起きた出来事と似ているとしても、この物語はフィクションである」と注意しています。なにか作品の元となるような実際のスキャンダルがあったのでしょうか。
 弁護士に言われたアドバイスがもとになっています(笑)。いや、その通りです。この映画に出てくる多くの出来事は現実に起きたことであり、基本的なプロットも現実のものです。映画は刑務所内での暴動から始まりますが、そこでドラッグの密売グループが他のグループを殺そうとします―彼らはまた腐敗した警官から援助を受けてもいるのですが―これは本当に起きたことです。それから暴動の中、売人たちと警察の間に立つ人権家が出てきますね。彼はその後で州議員になるのですが、これも現実の話です。この州議員は、ミリシア(腐敗した警官たちによる武装組織)についての調査をはじめ、議会にもミリシアの調査に乗り出すよう説得しますが、ジャーナリストが彼らに殺されるまでは実現しません。これもまた事実なのです。だからほとんどが真実だと言っていいのでしょうね(笑)。

※他のインタビューでもこの作品のほとんどの部分が実話だと監督は答えています。「このインタビュー」では、他にテレビの司会者フォルトゥナトにも実在のモデルがおり、「ブラジル人じゃないと分からないだろうけど」と言っていたりします。

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――政治家や警察は監督の生活を困難なものにするのではないでしょうか。監督は彼らの腐敗を追及する映画を作っているのですから。
 もちろん、抗議はありますよ。私の製作会社は1997年に設立されましたが、それから18回は訴えられています。訴えたのはすべて警官です。それからもちろんBOPE当局にも訴えられています。というのも彼らが言うには、私たちはBOPEを酷い仕方で表現しているからだそうです。ですから、ええ、こういうことをすれば大変なこともありますね。ですが、私たちはすべての訴訟に勝っています。それは私たちが描いていることが基本的には真実だからです。何事にも犠牲はつきものです。
 ただし言っておかなくてはならないのは、『エリート・スクワッド2』に対しては政治側からかなりの反撃があるだろうと予想していたんですが、実際にはそうならなかったということです。それはこの映画がすごい早さで人気になったためでしょう、その人気に助けられたと思っています。1100万枚以上のチケットが売れたのですが、政治家からすればそれだけ人気がある映画に反対しようなんて思わないでしょうからね。

――映画の中でも、政治家に対して世論が与える影響を描いていますね。
 その通りです。これはなにもブラジルにかぎったことじゃないでしょう?(笑)。どんな国にもあてはまることです。

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――『エリート・スクワッド』は2作とも、リオのスラムで撮影されました。ファベーラで撮影する際の駆け引きはどのようなものなのでしょう。
 ファベーラで撮影されたどの映画も、地域のコミュニティのリーダーと話すことになります。そしてそのリーダーたちもそれぞれの問題を抱えています。ですからスラム、あるいは密売人たちに支配されているファベーラで撮影する場合、コミュニティのリーダーのところへ行くことになりますが、彼らはまた確実に密売人たちに撮影隊がくるということを伝えるはずです。そうしたことがないと言えば絶対に嘘になります。これは前作にも本作にもあてはまることですし、『シティ・オブ・ゴッド』など、この場所で撮影されたすべての映画にあてはまることです。
 『エリート・スクワッド2』は面白いことになりました。というのも前作では警察とドラッグ・ギャングの関係を扱っていたので、ドラッグの売人たちが支配するスラムで撮影しましたが、『エリート・スクワッド2』ではミリシアを扱うことにしたので、彼らが支配しているスラムで撮影したんです。私はこの状況についての現実的な評価をするように努力しました。とくにその地域の観客にとってそう思われるようにね。彼らはスラムを知っていますから。
 『エリート・スクワッド』では多くの問題が起こりました。私たちが撮影(shoot)しているときに銃撃戦(shoot-out)が起きたり、私たちのクルーが売人たちに拉致されてしまったりね。でも今回はこういうことは何も起こりませんでした。ミリシアは警察から説明を受けていたんです。ドラッグ・ディーラーたちは、警察やマフィア(ミリシア)よりも興奮しやすいんですよ。マフィアは……彼らは我を忘れてしまうということがないですね。だから私は撮影しやすかったと感じるんでしょう。それからまた、彼らは決して脚本を読みませんでしたし、私が何をするのかも分っていませんでした。いま彼らの縄張りで撮影できるかは分かりませんね(笑)。たぶんできないでしょう。

――前作が人気になったことで、ロケ地の住民によるサポートも得やすくなったのではないですか?住んでいる場所が映画に出ることについて興奮していたのではないでしょうか。
 前作の人気は本当に助けになりました。それから役所もです。一作目のときには、撮影許可を得られなかったんです。私がこの国で撮影するためには、政府を脅し、マスコミのところへ行って検閲官呼ばわりしてやるぞと言わなくてはなりませんでした。『エリート・スクワッド2』では、申請したら許可がおりました。今作に出てくる警察の司令部は、本物の司令部です。議会のシーンは、本物の議会で撮影されました。ですから、この作品の人気、それから続編を見たいとみんなが思っているという事実――インターネットの評判を見れば明らかです――が、私たちが映画を製作できるように、政治家たちや地域のコミュニティを動かしたのです。もちろん政治家たちは、私たちが第一作の単なる別バージョンを作ると思っていて、本作がこうしたものになるとは予想していなかったでしょう。撮影許可に関しては、少し難しいことになったね!

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――前作では海賊盤が大問題になりましたが、本作では海賊行為を食い止めるために対策をしたそうですね。ブラジルではこびる海賊行為についてどうお考えですか。
 ブラジルでは本当に広がってしまっています。『エリート・スクワッド』のときには、劇場公開の三ヶ月前に誰かが会社にあった字幕作業中のDVDを盗み、それが人気になってしまいました。いわば必見の作品になってしまったんです。この出来事は新聞や雑誌の表紙を飾りましたが、まだ公開もされていなかったのにです。当時私は本当に精神的なショックを受けました。一方で不思議なことに、ビジネスマンとしては多額の損失をしたわけですが、監督としては「おお、みんなが僕の映画を気に入ってくれている」と思ったりもしました。相反する感情ですね。
 とはいえもちろん言っておきますが、海賊行為とは戦わなくてはなりません。海賊盤DVDを売る人々は税金を払いません。税金を払わないから安く売れ、合法的に商売をしている人々を追いやるのです。ブラジルの海賊行為は警察の腐敗と関係しています。警察は映画を売っている人間たちを逮捕しないんです。ですから海賊行為は明らかに悪いことですが、それは映画にとってだけでなく、他のことにも関わっています。現代ではインターネットのせいで、海賊行為は非常に広がってしまっていますし、対処の仕方にも様々なアイディアが要求されるでしょう。

――続編を守るための方法についてもお願いします。
 私たちは海賊行為をとても恐れていたので、『エリート・スクワッド2』では昔ながらのやり方を採用したんです、つまり絶対にデジタル化しないという方法です。何もかもフィルムで行いました。お分かりだと思いますが、デジタル化しなければ、海賊行為はできないからです。劇場での上映についても、ほぼ千におよぶ劇場で公開しましたが、デジタルコピーは使いませんでした。すべて35mmフィルムです。これはちょっと正気ではないですし、コストもかかりましたが、それでも利益はありました。1100万枚を超えるチケットが売れたからです。南アメリカではこれまで1位だった『アバター』の興行収入の記録を上回ったんです。
 それから私たちは配給会社を持っていませんでした。私のパートナーと一緒に、ガレージでこの映画を配給したんです。この昔ながらのブラジルの配給業者を雇って、「私たちは自分たちで配給しようと思うのですが、小規模じゃないんです。この映画はブロックバスター(大ヒット作)になると思うから、規模はかなり大きくなるはずです。どうしたらいいかな」と言ったんです。すると彼は「なるほど、空き部屋はあるか?」と言ってきたので「ガレージがある」と答えました。そうしたら彼が「テーブルを置いて、コンピューターシステムを作ろう。四人置いて、印刷しよう」と言ったんです。こういうわけで私たちはオフィスの中に配給会社を作りました。この配給会社はまだオフィスにあって機能していますし、好きなことをしています(笑)。笑えますね。

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――本作はアカデミー外国語映画賞のブラジル代表に選ばれました。ブラジルの映画がアメリカへ向かうことについて気になることはありますか。
 それぞれの文化の中で作られた映画は、翻訳することができる要素と翻訳できない要素の両方を持ち合わせています。これはブラジル映画でもアメリカ映画でも、どこの映画でもそうです。大抵ブラジルの映画アカデミーは、アカデミー賞に送る代表作品を選ぶとき、アカデミーの会員たちがどう思うかをあれこれ考えます。彼らは自分たちが1番だと思う映画ではなくて、1番受賞するチャンスがありそうな映画を選ぶんです。
 今年、彼らはこんなようなことを言いました。「もうそういうことはしない。私たちは、自分たちの文化の中で最大のインパクトを持つ映画を送ることにする。それはこの映画が私たちの国、私たちの文化をありのままに見せているからだ。この映画がブラジルに特有な要素を多く含んでいるとしても、アカデミー賞に送り、どうなるかみたいと思う」と。いま私たちは新たな時代にいて、インターネットなどがあり、文化の壁はとても小さくなっていると思います。ですからこの映画はちゃんと翻訳されると思います。ただ、外国語映画賞にはたくさんの素晴らしい映画が集まります。どの作品にとっても、チャンスはとても限られています。62作もの傑作が、5個のノミネート枠を争うのですから。

――この作品で、リオ都心部の暴力を描く三部作が完結しました。このテーマはもう終えるのでしょうか。
 私が見ることのできるかぎりでのリオにおける暴力については語ったと思っています。やろうと思っていた仕事はやりとげたと思います。つまり、リオにおける暴力が生まれる過程を誰にでも理解できる仕方で描くこと、この複雑な社会のプロセスを因果関係が分かるような仕方で整理するという仕事です。
 『バス174』では、バスに立てこもったストリートキッズを見ました。そして私は国がこの少年のことを彼の人生を通じてどれだけ暴力的に扱ってきたのかを示しました。つまり私が言おうとしたのは、取るに足りない小さな事件やストリートキッズたちに関する国の誤った処遇が、いかにして暴力的な事件を生み出すのかということです。『エリート・スクワッド』では、国が警察の処遇を誤り、低い給料しか払わず、不十分な仕方での採用をすることなどによって、いかにして腐敗した暴力的な警官を生み出しているのかについて語りました。ですから『バス174』と『エリート・スクワッド』を見ているときには、国が作り出した暴力事件と腐敗した暴力的な警官が路上で出会うのを見ることになります。私たちが多くの暴力を抱えているのも当然ですね。『エリート・スクワッド2』では、どうして国はそんなことをするのかということを問いました。それからまた、政治的なレベルでの腐敗について語らなくてはなりませんでしたし、どのようにして警察は支配され、ミリシアは政治家たちに投票することになるのかといったことについても語る必要がありました。これで私は一つの絵が完成したと思いますから、リオにおける都心部の暴力に関するかぎり、もう私に言えることはありません。

――次に取り組む作品として、何に興味がありますか。
 そうですね、ブラジルでは「Mensalão」―「知的な賄賂」といった意味です―について企画しています。これは、ジルマ・ルセフ政府において起きたスキャンダルを見ることによって、政治腐敗について語る作品です。このスキャンダルというのは、与党が選挙票のために報酬を払ったり、票を買ったり、賄賂の授受をしたりということを、きわめて組織化され広範囲にわたる仕方で行っていたというものです。この映画を作ってみたいと思っています。というのもそれは、腐敗や政治と腐敗の結びつきという、私の国に固有の、私たちが取り組まねばならない問題について語ることになるからです。

※パジーリャ監督は次回作としてアメリカでは『ロボコップ』をリメイクすることが決まっています。

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この記事へのコメント

エイブ
2012年02月12日 13:19
翻訳本当に感謝です
1、2を通してみて自分が今まで見た中では最高の映画だったのですが(まだ17年しか生きてないけど)ホントにいろんな意味ですごい映画ですね

どうでもいいけど極悪警察のロシャ役の俳優さんかっこよすぎる
ina
2012年02月12日 23:04
コメントありがとうございます(・∀・
17才ですか、若い!(笑)この連作は本当にいい映画になっていると自分も思います。

管理人はやはりナシメント役のヴァグネル・モーラが一押しです。
フロレス
2012年05月08日 22:26
等ブログで引用させていただきました!

とてもいい映画です!
http://br6jp.blog.fc2.com/
ina
2012年05月08日 23:19
コメントありがとうございます。
記事を拝見しましたが、ブラジルにお詳しいようですね、
あらためて勉強になりました(・∀・

自分もとてもいい映画だと思います(´∀`

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