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zoom RSS 『Blissfully Yours/ブリスフリー・ユアーズ』アピチャッポン・ウィーラセタクン その1

<<   作成日時 : 2010/06/09 01:01   >>

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今年のカンヌ映画祭も閉幕、パルムドールはアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の『ブンミおじさん』でした(´∀`* 『世紀の光』がとても素晴らしい作品だったので期待していましたが、いや〜嬉しいですね。予告していたカンヌ便乗企画その2として準備していたのが、偶然ですが同監督の『ブリスフリー・ユアーズ』。今回はデータ・感想編!

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『Blissfully Yours』(2002)
原題『Sud sanaeha』/映画祭上映タイトル『ブリスフリー・ユアーズ』

監督/脚本 アピチャッポン・ウィーラセタクン

出演 カノクポーン・トングラム・・・ルーン
   ミン・オー・・・ミン
   ジェンジラ・ジャンスダ・・・オーン

製作 タイ・フランス
受賞歴 2002年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリ

◎あらすじ
 ビルマ人の青年ミンは、職を求めてタイへと違法に移住してきた不法移民だ。町で暮らす彼は、ある日恋人のルーンと二人で国境近くの森林へピクニックへ行く。そこへ二人の知り合いの中年女性オーンもやってきて・・・。

◎感想
 以前、大絶賛した同監督の『世紀の光』に比べると、やはり映画的な感動は劣るものの、『世紀の光』の完成度とはまた違う、長編二作目の(いい意味での)若さにあふれた作品だと思います。ちなみに、『世紀の光』の記事はこちらからどうぞ。
この前の記事でも書きましたが、管理人のウィーラセタクン初体験は『トロピカル・マラディ』でした。いまでもあまり意見は変わっておらず、『トロピカル・マラディ』は確かに映像体験としては鮮烈なものがあり、幻想的で美しい映像には息を呑みます。しかし脚本が分かりにくい(解釈が多様になりうるとも言えますが)というよりも、ないようなもので、非常にとっつきにくく、あまり映画の中に入ることができなかったので、個人的な評価はそれほど高くはありません。管理人の想像力不足、解釈力不足も当然あるのですが・・・。

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 それに対して本作は、映像的にはジャングルの緑の美しさはあるものの、『トロピカル・マラディ』の視覚を奪うような美しさとはいかず。その代わり、脚本的な部分で『世紀の光』でやがて昇華されることになる、いくつかのテーマが見られ、また映画的には『トロピカル・マラディ』よりも分かりやすかった気がします。

 と、やや比較による感想になってしまいましたが、ここからは本作単品から受けた印象や感想を述べていくことにしましょう。
 あらすじに書いた通り、この作品はタイの都市部でのパートと、ピクニックのパート、二つの部分からなります。町のパートは、主要な登場人物の顔見せといった面もありますが、一応の目的異は病院や市庁舎などの近代的なものと、そこで生活する現代人を描くことにあるように思えます。とはいえ、ストーリーの進行、のようなものはないと思っていただいて結構(・∀・;

そして、メインとなるのは森(山?)の中でのピクニック。ウィーラセタクン監督の作品は、二部構成のものが多いですが、基本的には以下のような対立図式がモチーフになっているように思えます。

都市と田舎。あるいは人為と自然。
現在(未来)と過去 。都市が現代、田舎が過去を表現することあり(『世紀の光』)
欲望の抑制と自由な発露。

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 さて、本作におけるパートの切り替えは都市⇒森という場面の移動ですが、内容の面ではそれ以上の変化が起きます。つまり山の中に入ると、一気に性描写や性を感じさせる描写が増えます。というよりも、山でのピクニックはすべて(おそらく性的なと言い切っていいでしょう)欲望を自然の中で、「自然に」人間が満たしていく姿を描いています。
 こうして、ジャングルの自然を切り取るカメラの中に、人間もまた自然なものの一つとして入っていくことになるのです。そこでは欲望を抑制しようという考えはなく、まさに欲望のままに動くことで、ブリスフリーになる訳です。多分(笑)。ここには監督のアイデンティティもやや影響しているのかもしれないと、邪推してしまいますが、それは置いておきましょうか。

 以上、管理人はこの作品をこんな感じで頭では理解しました。ただし作品としては、後半がとくにそうですが、ストーリーに展開のようなものはなく(ある意味でははじめから物語なんてないのか)、長回しも相まって眠くなるような冗長さを感じてしまいました。 前半部が終わり、後半部へ移行するときにはじめてオープニング・クレジットが流れます。それが開始45分の時点(笑)。その後75分以上が森の中ですが・・・ぜひ見てみることをお勧めします(笑)。ところどころ、綺麗なショットもありますが、ちょっと長く回しすぎかも(・∀・;

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 この作品で描かれている自然と欲望というモチーフは次作『トロピカル・マラディ』に引き継がれ、伝説を背景により寓話的に描かれます。 そして都市と田舎、それを貫く記憶のモチーフは『世紀の光』に引き継がれ、映画監督としての成熟も手伝って、素晴らしい作品になりました。こう進歩史観的にフィルモグラフィーを見るのもちょっと問題はあるかもしれませんね。とはいえ、本作の時点ですでに監督の非凡さを感じることはできますが、まだちょっと何かが足りないなという印象も否めません。しかし、この作品には監督の以後の作品を予想させるエッセンスがあり、監督の作品を初めて観る方にその独特さを感じさせるには十分な映画でしょう。一番見やすいのは『世紀の光』だと思いますが。

 それにしても、ウィーラセタクン監督のパルムドールは本当に嬉しいかぎり。唯一の不安は、日本ではどのレベルで「公開」されるかというところですかね(・∀・; 1975年の『Chronique des annés de braise』という作品よりあとのパルムドール作品はずっと一般公開されているようなのですが、ウィーラセタクン監督の作品が儲かるかといえば・・・(´∀`; 配給がつかなければフィルメックスで間違いなくかかるでしょうが、続報を待ちたいですね。

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本作の監督インタビューを和訳した「その2」はこちら!
http://planeta-cinema.at.webry.info/201006/article_2.html

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ina様

はじめまして。私は「タイ式エンタテイメントの楽しみ方」という、タイの音楽や映画について好き勝手なことを書いているブログをやっています、kapirajaと申します。

http://blog.livedoor.jp/kapiraja1968/

事後報告になってしまうのですが、先日、私のブログでもこの「ブリスフリー・ユアーズ」について書きまして、その際、こちらの記事を参考にさせていただきました。

私が持っているのはタイ版のDVDなのですが、それが検閲で編集された物だと、こちらのブログではじめて知りました。

それと、アピチャッポン監督のインタビューもとても参考になりました。これは、タイ版DVDには収録されていませんでしたから・・・。

私のブログはタイに関するものだけですので、あまり接点が無いかもしれませんが、これからもこちらのブログを楽しみにしています。
kapiraja
2011/02/07 22:27
はじめまして、コメントありがとうございます。
拙い記事ですが参考にしていただければ、書いた甲斐があります。

ブログ拝見しましたが、タイ映画のカテゴリに惹かれました。日本で公開されていないタイ映画はかなりの数あると思いますが、面白そうな作品がありますね!

更新の遅いブログですが、思い出したときに見ていただければ嬉しいです(´∀`




ina
2011/02/08 01:27
とても良い評価です。ありがとう。
チェリー
2011/02/17 02:29

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