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zoom RSS 『Tropical Malady/トロピカル・マラディ』 アピチャッポン・ウィーラセタクン その1

<<   作成日時 : 2010/09/25 22:35   >>

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新作『ブンミおじさん』の劇場公開が決定した模様のウィーラセタクン監督。今回はカンヌ映画祭審査員賞を獲得した同監督の『トロピカル・マラディ』を紹介。新作の公開を機にこれまでの作品も特集上映されるかもしれませんね(・∀・

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『Tropical Malady』(2004)
原題『Sud Pralad』/映画祭上映タイトル『トロピカル・マラディ』

監督/脚本 アピチャッポン・ウィーラセタクン

出演 バンロップ・ロノーイ…ケン
   サクダー・ゲオブアディー…トン

製作 タイ・仏・独・伊
受賞歴 2004年カンヌ国際映画祭 審査員賞

◎あらすじ
 兵士のケンと田舎の青年トン、前半では惹かれあう二人が村でデートする日常を描く。一転して場面は森の中に移り、後半では人間が虎に変わってしまうという伝承をもとに幻想的な場面が映し出される。

◎感想
 『ブリスフリー・ユアーズ』『世紀の光』は紹介していたのですが、まだこの作品を紹介していませんでした。『トロピカル・マラディ』は管理人にとっては初めて見たウィーラセタクン監督の作品なので、鑑賞時に感じたいろんな感情をよく覚えています(・∀・

 簡単に作品自体の内容を説明しておくと、作品はウィーラセタクン監督お馴染みの二部構成になっています。冒頭で中島敦の『山月記』が引用されるように、本作では人間が虎に変わるという(タイの?)伝承が作品を一貫するモチーフとなっています。とはいえ、作品自体に明確なストーリーの流れといったものはなく、あらすじに書いたように、前半では一組のゲイのカップルがいちゃついている様子(笑)をカメラは淡々と切り取っていきます。途中で伝承の話も出てきていたと思いますが、前半から後半へ作品は予想を上回るほど違う話に展開していきます。
 後半は森の中に迷い込んだ男と、獣になったかのように森の中をさまよう男を描きます。演じているのは前半と同じ役者さんですが、おそらくストーリー的には前半と切り離して考えた方がよさそうです。個人的には後半のパートにいたって、ストーリーを追おうとする努力は放棄した記憶があります(笑)

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 さて、このような内容の『トロピカル・マラディ』。初めて見たときの感想は、以前にも書いたことがありますが、映像体験としては本当に衝撃的でした。とくに後半は、森の中の神秘的な雰囲気が素晴らしく、カンヌで評価されたのも納得の出来でした。その一方で、あってないようなストーリーには本当に当惑しました(´∀`; ストーリー性のない映画というのはよくありますが、本作の後半部は「人間が虎に変わる」という伝承を再現することで意図がありそうなのにもかかわらず、映画からは何を伝えたいのかが明確に伝わってこないというか…。

 とはいえ、いくつか監督の作品を見つつ、インタビューなんかも読んだりすると、この作品における後半部というのはやはり前半部との対比で描かれているのかなという気がしてきました。つまり、前半と後半の対比として、「現代⇔伝承(昔話)」や「村の中⇔森の中」、そして本作の場合とくに重要な対比として「人間⇔虎」が挙げられるでしょう。人間と虎が何を現わしているのか考えると、簡単に浮かぶのは、獣になると欲望が発露するという流れかもしれません。確かに『ブリスフリー・ユアーズ』では場面が森の中に転換すると性描写が増えましたが、しかし『トロピカル・マラディ』ではそのようなことはありませんでした。むしろ、前半の方がいちゃついているくらいですし(・∀・; 個人的には性的な意味での欲求というよりも、恋愛に関する独占欲などの欲深さを虎は現わしているのかなと感じています。人間が虎になるのはなぜか、それを考えたり感じてみたりすることが、この作品の核心的な対比を理解することにつながるのではないでしょうか。

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 ちなみに対比といえば、「現代⇔伝承(昔話)」という点に関しては、監督はやはり「記憶」というものを非常に重要なものとして捉えているのかなと思いました。伝承あるいは昔話は、民族の記憶と言えると思うので。一方で、個人的な記憶をモチーフとしたのが『世紀の光』ということになるでしょう。

 というわけで、こうやって対比的に捉えると『トロピカル・マラディ』にもたくさんの意味があるように思われてきて、もう一回観たくなります(笑)。次に観るときには、映像だけでなく作品全体として傑作だと思うかもしれませんね(・∀・
 今年の東京フィルメックスでは劇場公開に先駆けて『ブンミおじさん』が上映され、監督も審査員として来日されるようです。その予習も兼ねて、あるいは映画祭で観て気になったら、『トロピカル・マラディ』をぜひどうぞ。

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本作の監督インタビューを和訳した「その2」はこちら!
http://planeta-cinema.at.webry.info/201009/article_4.html

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
はじめまして。この映画で検索してみたところこちらのブログに行く当たり、お邪魔させていただきました。
先日とある映画館でアピチャッポン特集があって、この映画を選んだのは「ゲイが主人公かぁ、そういえばタイってゲイが多いんだっけ?」みたいなごく軽い気持ちで観に行ったのですが、心底衝撃でした。震えました(笑)ディスク化されていないのを知るに及び、結局、3回(『真昼の不思議な物体』『ブリスフリー・ユアーズ』『ブンミ』も1回ずつ)観ました。おかげでお財布がヤバいのですが・・・。こちらのブログは丁寧な感想が読めただけでなく、インタビューまで掲載されていてとてもうれしかったです。ありがとうございます!
ところで虎は、この映画と、引用されている(監督が知って読んだのは企画を立てた後みたいですが)『山月記』と、これを書くときに中島敦が下敷きにした「人虎伝」とを並べてみると、またおもしろいなと思いました。同じ「虎に変身」でも、虎になった(あるいはそうと思われる)人物が強烈に抱いていたと窺われる感情・性情がそれぞれに異なるんですよね。また『山月記』については、「古譚」という一連の作品の中でこれだけが主人公が動物の姿をしているのにこれが一番人間くさい話である、というのも思い合わせるとおもしろいような不思議なような。
(下に続きます)
赤亀
2012/02/29 10:28
それから、もう少し鳥瞰的にみると、舞台がもっと北方だったら「熊」、海だったら「シャチ」、サバンナだったら「象」あたりに変身していただろうなと・・・監督の意図とはべつに、伝承(昔話)がけっこう素直にモチーフになっているというような感じがする点で、過去の人たちの記憶も自ずと混ざり込んでいるだろうなぁと、神話的な方面から捉えてみてもなんだか愉快であり、興味深いと思いました。
―などと、長々と(2回に分けるまでして)すみません(汗)この映画について話せる相手が身近にいないので、ちょっとコメントするだけのつもりだったのに、つい書き込んでしまいました。
最後に。特集にはなかったけれど観てみたかった『世紀の光』は、やっぱりよいのですね。実はこちらのブログでアマゾンのUK版という手があることを知って、そこには『トロピカル』もあってとひとり狂喜していたのですが、いつになるかわからないので『世紀の光』ももう買っちゃおうかな・・・というくらい、観たくてうずうずします。
赤亀
2012/02/29 10:30
コメントありがとうござます!
「長々と」とありますが、これだけ書いていただいて嬉しいかぎりです(´∀`自分もウィーラセタクン作品について語れる人は身近にいないもので、楽しく、友人を発見したような気分で読ませていただきました。

やはり、この作品の面白さは「人間が虎になる」のはなぜか・どういうことかを考えることにありますよね。不勉強ながら「人虎伝」については知らなかったので、個人的には『山月記』における「人間くさい」部分に引きつけて考えていましたが、記事を読み返すとちょっと考えが浅い気もします(。。;恋愛における独占欲だけでひとは虎になるのかどうか……。

また自分も赤亀さん同様に「記憶」から同監督の作品を見る傾向がありますが、『ブンミおじさんの森』が公開されたときには監督の作品を解釈する一つの視角として「トランスフォーメーション」という言葉がよく持ち出されていた記憶もあります。ウィーラセタクン作品は多様な解釈が許される作品なので、こうやって自分とは違う考えを教えてもらえるのは本当に楽しいです。
伝承といえば、昨年東京国際映画祭で観た『スリーピング・シックネス』も動物に変身する伝承をうまく使っていた作品でした(ちょっと関係ないですが好きな作品でした)。

『世紀の光』は個人的には同監督の最高傑作だと思っています。UK版DVDは総じて安価で、パソコンですぐ見れるのでハマられることをオススメします(笑)。本当はスクリーンで観れた方がいいのは言うまでもないですが。

とにもかくにも、熱意のこもったコメントをありがとうございましたm(_ _ )m
ina
2012/02/29 13:58

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