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zoom RSS 『乳母』 マルコ・ベロッキオ監督

<<   作成日時 : 2011/07/03 00:55   >>

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すぐに更新すると言いつつ、もう一週間が経ってしまいました(・∀・; 予定通り、マルコ・ベロッキオ監督の未公開作をもう一本紹介します。文芸作品を原作とした、静かだけれども作品の力強さが印象に残る『乳母』という作品です。ベロッキオ監督にしては意外にも?正統派の作品です。

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『The Nanny』(1999)
映画祭上映題『乳母』/原題『La balia』

監督/脚本 マルコ・ベロッキオ
原作 ルイジ・ピランデッロ
出演 ファブリツィオ・ベンティヴォリオ…モーリ
   マヤ・サンサ…アネッタ
製作 イタリア
受賞歴 1999年カンヌ国際映画祭コンペディション部門出品

◎あらすじ
 20世紀初頭のローマ。精神科医のモーリと妻ヴィットリアの間に子供が生まれた。しかし妻は出産時のパニックからか、子供を抱くことも授乳することもできない。そこでモーリは、アネッタという若い女性を乳母として雇うが、ヴィットリアは疎外感を感じるようになり……。

◎感想
 先週取り上げた『結婚演出家』に続いて、今回もマルコ・ベロッキオ監督の作品を紹介します。カンヌのコンペに出品され、『夜よ、こんにちは』のマヤ・サンサが初めて映画に出演した作品でもある『乳母』です。これがまた、いい映画でした(・∀・

 映画は様々な人物を映しながら始まり、ヴィットリアの難産から動き出していきます。出産時のパニックだけが原因なのか、明確な描写がないためはっきりとは分からないのですが、ヴィットリアは自分の子供に授乳することができません。そこで主人公のモーリは、乳母を探しにとある村を訪ねてアネッタを雇うことに。

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 しかし、自分の子供に優しく授乳するアネッタを見るにつけて、妻のヴィットリアは当然マイナスの気持ちを抱えていくことになります。それがどのような気持ちかは想像するしかありませんが、たとえば子供を取られたという喪失感や、自分は母親として失格だという自己否定の気持ち、あるいは母親としての仕事がなく家の中に居場所がないという疎外感などが考えられます。

 とくに、これは本作のテーマと関わると思うのですが、当時(20世紀初頭)はまだまだ女性は家の中で「妻として」「母親として」働くものだという価値観が当然のように存在していたと思います。その状況にあって、母親としての仕事をはたせず、また負の感情の中で夫にも険悪な態度を取ってしまうヴィットリアは、自分の存在意義を感じられなくなっていきます。ここから、夫モーリ、妻ヴィットリア、乳母アネッタの三人の関係が変化していくことになります(・ω・´

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 と、ここまではヴィットリアのことを書いてきましたが、むしろ本作のメインキャラクターはモーリとアネッタ。この二人も問題を抱えた人間として描かれます。まずモーリは、精神科医という仕事について、精神的な問題を抱える患者をどう扱えばよいのかといつも考えています。管理人は精神分析?などの歴史にはまったく詳しくないのですが、おそらく20世紀初頭といえばまだまだ精神科医という仕事は新しい仕事であったはずの時代ですから、彼の悩みはもっともなものなのでしょう。ちなみに、彼が務める病院には女性の「精神病」患者が印象的に出てきます(もう言いたいことは分かるでしょう)。

 そして、アネッタ。乳母をするくらいですから、彼女にも生まれたばかりの子供がいるのですが、その子供の父親である彼女の恋人は、いまは政治犯として牢獄に入れられています。また彼女は文盲なので、手紙を書くどころか、恋人からの手紙を読むこともできません(100年前の地方の女性としては普通のことなのでしょうか?)。そこで彼女はモーリに文字の読み書きを教えて欲しいと頼むのですが、このあとは実際に鑑賞してのお楽しみに。

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 さて、ここまで書いてきたところから考えると、本作のテーマは「女性の自立」なのだろうと管理人は感じています。20世紀初頭、まだ女性は「母として」か「妻として」としか見られることができなかったことがこの映画からも分かります。だから妻のヴィットリアは悩んでは疎外感を感じ、映画の後半のような行動を取るのでしょう。また精神病院にいる女性たちも「〜として」という形でいつも規定されてきたからこそ、精神を病んでしまったと考えることができるでしょう。ヴィットリアと精神病院にいる女性たちは、20世紀初頭(あるいはそれ以前の時代)の女性の象徴として描かれていると思います。

 それに対して、読み書きを自分から学びたいと言うアネッタはそのような象徴としての女性たちに対置されているのではないでしょうか。映画のはじめから最後まで、アネッタはいつも自分の意志で何をするか決めているように見えます。そんな彼女の姿に、ベロッキオ監督あるいは原作のルイジ・ピランデッロは「女性の自立」を託しているのだと思います。

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 それから作品のテーマだけでなく、映画全体の雰囲気も良かったです。かなり抑えた静かな映画で、『愛の勝利を』のようなベロッキオ監督炸裂!という映画ではないですが、本作の内容にマッチした雰囲気が醸し出されています。本当に普通の20世紀初頭を描いたイタリア文芸映画みたい(笑)。

 大事件が起きるわけでもなく、しかし退屈でもなく、安心して見られる映画になっているのはやはり監督の力量でしょう。個人的にはモーリとアネッタの交流の温かさにやられました(´∀` DVDはUS版とイタリア版(字幕は不明)が出ています、オススメできる作品ですのでぜひご鑑賞を!なお本作についてのインタビューが見つからなかったため、今回はインタビューはありませんm(_ _ )m

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『結婚演出家』と『乳母』の間には個人的にはベロッキオ監督の最高傑作である『母の微笑』という作品があるのですが、こちらはインタビュー付DVDを買っちゃおうかと思案中なので、またいつか紹介したいと思っています。

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