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zoom RSS 『サタンタンゴ』 タル・ベーラ監督 その1

<<   作成日時 : 2011/08/30 02:19   >>

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上映時間7時間、ハンガリーの巨匠タル・ベーラ監督の伝説的作品『サタンタンゴ』を今回は紹介します(・∀・ 夏休みということでやっと時間を取って観れたのですが、期待に違わずとても素晴らしい作品でした。観るのは確かに疲れますが、映画好きにとっては格別な時間を過ごせる作品だと思います。

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『Satantango』(1994)
映画祭上映題『サタンタンゴ』

監督 タル・ベーラ
原作 クラスナホルカイ・ラースロー
製作 ハンガリー・ドイツ・スイス
受賞歴 1994年ベルリン国際映画祭 カリガリ映画賞

◎あらすじ
 ハンガリーの小さな村。もはや村に活気はなく、村人たちの中には金を持ち逃げして村を去ろうとしている人間もいるようだ。そんな中、1年半前に死んだと思われていた若者イリミアーシュが帰ってくるという知らせが村に届く。
 三角関係の男女、村人を観察する医者、酒場に集まる人々など、視点を変えて映画はこの一日を描き、やがてイリミアーシュが村に戻ってくる…。

◎感想
 というわけで、やっと見れました『サタンタンゴ』!uk版DVDのパッケージによれば上映時間は419分(´∀`;ずいぶん前にDVDは買ってあったのですが、心を決めて休日に一気に見ました……とりあえず体力的には疲れる作品です(笑)。それでは簡単な紹介と感想いきましょう。

 本作は全12章で構成されています。この12章というのは、タイトルにもある「タンゴ」のステップが前に6歩+後ろに6歩の12歩で構成されていることに由来しているそうです。ちなみにそのステップと並行して、1〜6章が村人たちの視点を変えて描く前半、7〜12章がイリミアーシュが戻ってきてからの話を描く後半となっています。

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 映画は、牛たちを遠くから映しだす映像から始まります。これを見て、やはり感じたのは「タル・ベーラだ」ということ。『ヴェルクマイスター・ハーモニー』でもそうだった長回しで、7時間の長丁場が始まることを告げてくれます(・∀・ 以下、簡単に6章までのあらすじを。

(1)「帰還の知らせ」
 浮気をしていると思われるフタキとシュミット夫人、そして夫であるシュミット氏の三人の視点から物語が語られる。舞台は共産主義の時代のようだが、何やら村人たちは金をめぐって共謀している。そこに、イリミアーシュという死んだと思われていた人物が帰ってくるというニュースが飛び込んでくる。

(2)「蘇生」
 そのイリミアーシュと相棒のペトリナの話。ややネタバレにつながるので省略。

(3)「知ること」
 家から双眼鏡で村人を観察し、ノートまで取っている医者の視点から、(1)と同じ時間を切り取る。この日は強い雨が降っている。

(4)「クモの仕事1」
 酒場に集まる人々。イリミアーシュとペトリナを酒場で見たと酔っぱらいが語る。

(5)「ほころび」
 ある少女の物語。言うことを聞かないペットの猫に対して、彼女はやがて暴力的になっていき…。

(6)「クモの仕事2(悪魔の乳首、サタンのタンゴ)」
 酒場に集まる人々。やがて夜になり、彼らは狂ったように踊り続ける。

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 こう見ると、どの章も内容としてはそれほど複雑ではないのですが、とにかく一つのシーンを時間をかけてじっくりねっとりと描写するので、どの章も印象深いものになっています。また前半の章はイリミアーシュの帰還の知らせが届いた一日を視点を変えて描いているので、それぞれの章がリンクしていますが、これも面白い。とくにあとの章になって、前の章の小さな出来事の背景が分かったりします。

 前半の章の中では、(3)と(4)が好きでした。3章については医者のキャラクターがいい。この医者は非常に重要な人物です。それから4章。この章は一つの独立した映画としても見れるくらいに示唆的で、完成度の高い章でした。兄には勝てない少女が、一方で猫に対しては絶対的に有利な立場にあることを自覚し、やがて虐待にいたるという内容。これは、すべての力関係についての暗示に感じられます。そして、この章のラストはすごい。衝撃的な内容を、しかし詩的に映し出していて、タル・ベーラ監督に感服するのみでした(・∀・

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 イリミアーシュが帰ってくる(7)章以降も非常に面白い展開なのですが、それは見てのお楽しみということに。参考のため、残りの章のタイトルを書いておくと…

(7)「イリミアーシュのスピーチ」  (10)「背後からの眺め」
(8)「正面からの眺め」       (11)「厄介事と仕事」
(9)「天国か?悪夢か?」     (12)「閉じる円環」

 uk版DVDの英訳ではなくwikiの英訳を参照したのですが、個人的に12章はこのタイトルが正確かなと思います。章のタイトルを見て、続きが気になっていただけたら嬉しいです。

 映画全体として感じたことを最後に3点ほど。まず、この映画で監督が執拗なほどに撮っている「人が歩く姿」について。普通の映画であれば、建物から建物の間にある移動のシーンというのは省略してしまいます。しかしタル・ベーラ監督は、むしろ歩く姿を撮りたいから登場人物を移動させているのだというくらいに、キャラクターたちの歩く姿を正面から背後からカメラに収めています。自分にはその意図がくめなかったのですが、監督の強いこだわりを感じるとともに、とても印象に残っています。監督の意図について思うところのある方は、教えていただけると幸いです。

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 次に本作のテーマについて。これも一言では言い表せないものですが、舞台が共産時代であることや、イリミアーシュが帰ってきた理由、彼が村人たちにすること、そしてあの第4章で少女が猫を虐待したこととラスト……こうしたことから考えると、おそらく共産主義における権力について、それだけでなく、ひいてはすべての権力構造や力関係について、力のある側と抑圧される側それぞれの人間を描いているのだと思いました。力を持つ側の人間は何をするのか。力を持たず支配される側、言うことを聞く側にいる人間たちはどうなっていくのか(映画のはじめからすでに舞台となる村はさびれ、登場する村人たちはみな堕落しているように思われます)。このような視点から、監督は人間に切り込んでいっているように感じました。

 また、イリミアーシュが表現しているもの、彼に託されたイメージについては監督が語っていることがあります(「その2」の監督インタビューをどうぞ)。その内容から考えても、以上のような見方は可能かなと思います。
 そして、最後の12章を見ると、なおこの映画には語ろうとしているものがあるように感じられます。この映画の完結の仕方は本当に素晴らしい。素晴らしいとしか言いようがないです。7時間疲れながらも観た甲斐があったと思わせてくれました。

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 最後に本作の個人的評価を。はっきり言うと、やはり『ヴェルクマイスター・ハーモニー』にはかなわないなと思いました。監督の表現したいものを2時間に凝縮した『ヴェルクマイスター・ハーモニー』の密度の濃さ、爆発しそうな緊張感に比べると、本作の7時間はやはり長い(´∀`; 鑑賞側が疲れていくという部分もありますが、作品の側からも緊張感が失われているような気がしますし、密度の濃さは圧倒的に『ヴェルクマイスター・ハーモニー』の方が勝っています。とはいえ、この比較は傑作という次元での比較であって、『サタンタンゴ』が自分にとって素晴らしい傑作であったことは間違いありません。

 上映時間からして一般公開はおそらくこれからもないでしょうし、映画祭でも見る機会はほとんどないと思います。DVDなら途中で停止もできるので(笑)、タル・ベーラ監督の渾身の一作、ぜひご鑑賞を(´∀`


本作の監督インタビューを和訳した「その2」はこちら!
http://planeta-cinema.at.webry.info/201108/article_7.html


(オマケ)DVDについて。
 本作のDVDはイギリス(uk)版とアメリカ(us)版が販売されているようです。管理人の持っているuk版は、画質はそれほどでもなく、特典が何も付いていませんが、とにかく安いです(12.97ポンド=1600円くらい)。DVD3枚組の箱入りで、見た目はそれほど安っぽくありません。us版は持っていないので分かりませんが、おそらく値段からするとuk版より質は良いだろうと思います。関係ないですが、本作を某書店が日本で発売したら15,000円くらい取りそうだなぁ(・∀・;(笑)。

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