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zoom RSS 『チキンとプラム』 マルジャン・サトラピ監督 その1

<<   作成日時 : 2011/11/21 22:43   >>

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今年の東京国際映画祭で観た中で、個人的にベストだった作品『チキンとプラム』について感想やらを書いてみました。監督は『ペルセポリス』のマルジャン・サトラピ&ヴァンサン・パロノーのコンビです。このタイプの映画に胸を打たれるとは思いませんでした……逸品です。

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『Chicken with Plums』(2011)
原題『Poulet aux prunes』/映画祭上映タイトル『チキンとプラム』
監督/脚本 マルジャン・サトラピ&ヴァンサン・パロノー
原作 マルジャン・サトラピ“Poulet aux prunes”
出演 マチュー・アマルリック…ナセル・アリ
製作 フランス・ドイツ・ベルギー
受賞歴 2011年ヴェネチア国際映画祭コンペディション部門出品

◎あらすじ
 1950年代のテヘラン。音楽家のナセル・アリは、ケンカしていた妻に愛用のヴァイオリンを壊されてしまう。大切な楽器を失ったナセル・アリは、死ぬことを決意し、ベッドに臥せる。
 ……その8日後に彼は死んだ。これは、彼がベッドの中で過去を回想し、未来を想いながら過ごす最後の一週間の物語であり、やがて私たちは彼の選択の意味を知ることになる。

◎感想
 『ペルセポリス』でカンヌ審査員賞を獲得した、マルジャン・サトラピとヴァンサン・パロノーのコンビによる新作がこの『チキンとプラム』です。『ペルセポリス』と同様、サトラピ監督が描いたグラフィック・ノベル(大人向けのマンガを指すらしい)が原作になっています。ただし、ところどころにアニメであったりファンタジー要素がちりばめられてはいるものの、前作とは違って今回は基本的には実写映画になっています(・∀・ そして、素晴らしい映画です。

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 あらすじに書いた通り、この映画のスタートは主人公ナセル・アリが死を決意し、そして8日後に本当に死んでしまったことを知らされるところから始まります。この時点ではなぜ彼が自ら死を選ぶのか、私たちには分かりません。もちろん、愛用の楽器が壊されたらショックでしょうが、新しい楽器を探せばいいと思ってしまいます。しかし彼は、新しい(うさんくさい店主いわくストラディバリウス)ヴァイオリンではどうもダメなようです。

 こうして、映画は8日後に彼が死んだことを伝えた後、ベッドに臥したナセル・アリの一週間を一日目に戻って順に描いていくことになります。彼自身はベッドの中にずっといるわけなのですが、彼が思い出しているという形での過去の回想や、いきなり未来の話が伝えられたりする構成になっているので、話自体は広がりを持って語られていきます。
その物語の中でのメインはやはり彼の過去。彼にとって、愛用のヴァイオリンはどんな意味を持つものだったのでしょうか。回想は青年ナセル・アリがヴァイオリニストを志し、修行に出るところから始まります。彼は高名なヴァイオリニスト(というより仙人みたいな人)のもとを訪れるのですが……。

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 また過去の回想以外にも、扉を閉ざしてベッドで寝ているナセル・アリをとりまく周囲の人々の反応を描いたり、いきなり未来に話が飛んで、成長したナセル・アリの娘が回想する形で物語を語ったりもします。彼には娘と息子が一人ずついるのですが、二人の将来の姿はそれぞれ濃いことになっています(・∀・; 全体を通してユーモアにあふれていて、随所にくすっとできる要素があり、死がテーマになってはいるけれども、必要以上に作品が重くならないように構成されています。
 それと関係して、実写の中にアニメーションであったり、ふざけた描写だったり、ファンタジー要素がからめられていて、とても見やすい映画になっている印象を受けました。これは監督二人の好みなんだと思いますが、かなり万人ウケする映画になっているのではないでしょうか。

 さて、高名なヴァイオリニストの前で演奏したナセル・アリでしたが、「技術があるだけだ」と厳しく批判されてしまいます。そんな彼がなぜヴァイオリニストになれたのか。あるいは、その頃のどんな思い出が、ヴァイオリンを失った彼に死を決意させたのか。そのあたりは当然、実際に鑑賞してのお楽しみということになります。本作は間違いなく日本でも公開されると思います。

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 それでは最後に本作のテーマとからめつつ管理人の感想を。管理人は基本的にはリアリズムに立った映画が好きで、あまりファンタジー要素のある映画は好みではないのですが、この作品はもう別格ですね(´∀` 何よりもストーリーとその語り方がよかったです。

 正直に言えば、ナセル・アリの過去は予想できてしまうものです(この作品のメインのスティル写真を見ればもう、という感じです)。それにもかかわらず、あのヴァイオリンに込められた意味が最後に分かったときにはやはり心を打たれました。その瞬間に、彼が死を決意した理由、彼の思いがはじめて理解できるものになったからです。つまり、彼が自ら死を決意したという形にはなっていますが、実際にはヴァイオリンが壊れた時点で彼は死ぬしかなかったということが分かります。むしろ、そのとき彼は死んだのだと言えるかもしれません。それはあのヴァイオリンが彼の人生を支えてきたものであり、文字通りの意味で彼の命だったからです。
 こう考えると、この作品は死がテーマになっていると思いますが、否定的にではなく肯定的に、死に値するもの、自分の命と同じほど価値のあるものが人間の中に存在することを教えてくれます。この映画ではもちろんそれは……。

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 また意外かもしれませんが、映画自体はナセル・アリの過去の一番シリアスな部分(つまり観客が一番知りたいところ)にあまり時間を割きません。しかし、その方がかえっていいのでしょう。くどくどと、それこそ観客を感動させようとして、悲しい場面を長々スクリーンに映し出すのではなく、大事なことをさらっと描いてしまうあたりに二人の監督のセンスを感じました。ユーモアある、フザケた部分が多いだけに、わずかなシリアスな場面が非常に心に残ります。東京国際映画祭の本作の紹介文句、「大人のファンタジー」はダテではありませんでした。

 とにかく、久しぶりに観ていて気持ちのいい映画でした。映画にぐいぐい引き込まれてしまう魅力があり、監督コンビのストーリー・テリングはやはり絶妙にうまいと思います。書き忘れましたが、俳優陣もそれぞれのよさを発揮していました。要するに、映画の中にあるすべての要素が良かったということですね。観やすさ(時系列はかなりジャンプしますが)、質の高さからして、日本でも一般公開されると思うので、本記事やインタビュー記事が参考になるのがそのときであることを期待します。

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本作の監督インタビューを和訳した「その2」はこちら!
http://planeta-cinema.at.webry.info/201111/article_4.html

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