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zoom RSS 『ラザレスク氏の最期』 クリスティ・プイウ監督 その1

<<   作成日時 : 2012/02/11 01:30   >>

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相変わらず隔週更新にも遅れる管理人ですが、今回は2005年のカンヌ映画祭「ある視点」部門賞を受賞した『ラザレスク氏の最期』を取り上げます。海外での評価がとても高く、ルーマニア映画が注目される嚆矢となった一品です(・∀・

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『The Death of Mr. Lazarescu』(2005)
原題『Moartea domnului Lazarescu』
シネフィル・イマジカ放映タイトル『ラザレスク氏の最期』
監督/脚本 クリスティ・プイウ
出演 イオアン・フィスクテーヌ…ラザレスク
製作 ルーマニア
受賞歴 2005年カンヌ国際映画祭 「ある視点」部門賞(作品賞)

◎あらすじ
 チャウシェスク政権下のルーマニア。妻に先立たれたラザレスク氏は、アパートで一人さびしく暮らしていた。ある夜、酷く体調を崩した彼は、こらえきれずに救急車を呼ぶ。しかし救急車はなかなか到着せず、彼は隣人に助けを求めることに。症状が悪化していくなか、やがて救急車が到着するが……。

◎感想
 年末に紹介した『If I Want to Whistle, I Whistle』に続いて今回もルーマニア映画、『ラザレスク氏の最期』を取り上げます。近年ルーマニアでは本当に多くの良作が製作されていて、DVDを買ったものの観ていない作品、観たけど記事にできていない作品がまだまだあるのですが、本作もその一つ。ドキュメンタリーのような真に迫る映像が印象的な作品です。

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 本作の舞台はチャウシェスク政権による共産党時代。一人(+三匹の猫)暮らしをしているラザレスク氏が、体の不調を感じているところから物語は始まります。ちょっとおかしいなと思ったのか、薬やお酒を飲んでみるものの、症状は悪化する一方。夜には耐えられないほど苦しくなり、彼は救急車を呼ぶことにします。

 ところが、この救急車がなかなか来てくれない。のんびり待っていることもできず、ラザレスク氏は隣人に助けを求めます。実は運の悪いことに、この日はバスの事故による負傷者が多数いて救急車が足りていないということが後で分かります。この救急車を待つアパート内でのシーンが作品の前半部になるわけですが、監督によると救急車に乗るまでに55分かかっているそうです。自分もまだかまだかと焦らされました(´∀`;

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 さて、そうはいっても救急車がなんとか到着します。女性隊員に付き添われ、ラザレスク氏もようやく病院へと運ばれることに。しかし、病院に着いたと思ったら、例のバス事故の負傷者で病院も手一杯のため、彼を受け入れることができないと言われてしまいます。医者とちょっとした口論をしながらも、医療隊はラザレスク氏を受け入れてくれそうな別の病院に向かうしかありません。そしてここからが本当の地獄、ラザレスク氏は行く先々の病院からたらい回しされることになってしまいます。

 時間が経つに連れて、ラザレスク氏の症状は悪化し、意識ももうろうとしてきます。医療隊員の女性が手を尽くしてくれるのですが、彼は病院に入院できるのでしょうか?あとは実際にご覧くださいm(_ _ )m

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 それではお決まりですが、作品全体の感想を。「シネフィル・イマジカ」の紹介文などでは、本作はルーマニア共産時代の医療問題を描いている作品と捉えられているようです。もちろんそうした見方もできると思うのですが、実はそうした側面を管理人はあまり意識しませんでした。
 というのも、たしかに感じの悪い医者はたくさん出てくるものの、バス事故による負傷者が多数いる状態では、意識のある患者(ラザレスク)を受け入れ拒否すること自体は不自然なことに思えなかったからです。これは何も、共産党時代のルーマニアにかぎった出来事ではないでしょう。受け入れ拒否をいいことだと言っているわけではありませんが、日本でも妊婦の受け入れ拒否などが社会問題となったように、世界の病院で起こりうることだと思います。
そのため、本作からは「ルーマニアの問題を暴いた作品」という印象を個人的には受けませんでした(出てくる医者の対応がお役所仕事なのは、共産党時代的なのかもしれませんが)。

 それよりもむしろ、死に行く人間のあまりにも哀れな最期のとき、あまりにもみじめな扱われ方に心動かされるものがありました。日本人としては「畳の上で死ぬ」ことに穏やかな死を見出したりもしますが、いくつもの病院から受け入れ拒否をされ、医療隊員の女性以外に優しくしてくれるひともいないまま意識が混濁していくラザレスク氏の姿は……。この記事を書くために映画の序盤を見直したのですが、そのラザレスク氏を観て、本当に切ない気持になりました。

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 ただし、ラザレスク氏の悲惨な最期自体も「ルーマニア的」だとは思いません。彼は妻に先立たれ、娘もカナダに行ってしまって一人暮らしを強いられたわけですが、同じ状況におちいることは日本に住んでいても十分にありえることです。昨年話題になった「無縁社会」ではないですが、どこに住んでいても自分が一人で死んでいく可能性は残ります。そうであるとすれば、孤独な「ラザレスク氏の最期」は、私たちの最期を映しているとも言えるでしょう。
 せめて死ぬときくらいは安らかな気持ちでとは誰もが願うことですが、死ぬときにこそ人生最大の不幸が待ち構えているかもしれない……こう考えると怖くなります。そんな本作にあって、唯一ラザレスク氏に親切にする医療隊員の女性が記憶に残りました。

 監督と脚本を務めたクリスティ・プイウ監督は、突き放したリアリスティックな映像で本作に力を与えています。ラストシーンの受け止め方はいろいろだと思いますが、欲を言えば、あのラストシーンで見せたような単にドキュメンタリー的なだけではない映像をもっと見せて欲しいと感じました。次作『Aurora』がすでに発表されDVDも発売されているようなので、本作からどのような進化を遂げたのか、そのうち買って確認してみたいと思っています。

 本作はシネフィル・イマジカで放映され、DVDも各国で発売されています。とくにUK版はかなりの安さなので、ぜひ(・∀・

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本作の監督インタビューを和訳した「その2」はこちら!
http://planeta-cinema.at.webry.info/201202/article_2.html

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