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zoom RSS 『5月の雲』 ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督 その1

<<   作成日時 : 2012/03/03 01:26   >>

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前回の『カサバ−街』 につづいて、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督の長編第二作『5月の雲』を取り上げたいと思います。小さな村で生きる人々の暮らしを美しい映像でつづった、個人的には大好きな作品です。これだけの作品を見せられたらファンになっちゃうなぁ(・∀・

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『Mayis sikintisi』(1999)
英題『Clouds of May』
シネフィル・イマジカ放映タイトル『5月の雲』
監督/脚本 ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
製作 トルコ
受賞歴 2000年ベルリン国際映画祭 コンペディション部門出品
    2000年イスタンブール国際映画祭 金のチューリップ賞ほか四冠

◎あらすじ
 映画監督のムザフェアが故郷の小さな村に戻ってきた。家族を登場人物にした映画を撮るためだ。映画のために彼は両親や親戚に話を聞いて回るが、父親が森の木を切ろうとしている国に反対していることを知る。

◎感想
 前回長編デビュー作『カサバ−街』を紹介したヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督の第二作、『5月の雲』を取り上げたいと思います。これで最新作を除いて一通り監督の作品を記事にしたことになりますが、言ってしまいましょう、この作品がジェイラン監督作品の中で一番好きです(・∀・

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 まず簡単に作品の紹介をしますが、前作と違って『5月の雲』には明確なストーリーがあります。そのため前作よりもかなり観やすい映画になった印象を受けました。
 そのストーリーは、映画監督のムザフェアが故郷に帰ってくるところから始まります。まだまだ駆け出し監督と思われるムザフェアは、家族に出演してもらって映画を取ろうと画策中。カメラを片手に、両親や祖父をはじめ、親戚に話を聞きに行きます。

 父親は村にある森の木を一人で守ってきたのですが、そこは国有地で、国は森の木を伐採しようとしています。これに猛反対している父親は、森の木を切らせないと意気込んでいる様子。
 あるいは彼のいとこはイスタンブールから来たムザフェアに、イスタンブールで仕事の世話をしてくれないかと頼んできます。ちなみにこのいとこは、『UZAK/冬の街』でもイスタンブールの主人公のもとへ転がり込んできたいとこを演じたモハメット・エミン・トプラクが演じています。『UZAK/冬の街』の主人公も本作のムザフェアと同じムザフェア・オズデミルが演じていることを考えると、キャラクターの名前は違うものの本作と『UZAK/冬の街』にはつながりがあると言えそうです。

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 それからこれはとても微笑ましくて好きなエピソードなのですが、別の幼いいとこは、ポケットに卵を入れて40日間割らずに過ごせたら欲しがっている時計を買ってもらうという約束を母親とします。それを見たムザフェアは「卵を茹でたら?」といきなり大人らしいズルイ発言をするのですが、いとこは「イカサマになっちゃう」と拒否。このあたりのいとこの純真さがまぶしかったです(笑)

 作品の前半を構成するこうした一つ一つのエピソードは、どれも地味と言えば地味なんだけれども、穏やかでとても雰囲気がいい。観ていてとてもいい気分でした。
 後半では親戚へのインタビューを終えたムザフェアが仲間を呼び、家族に出演してもらい映画を撮っていきます。その中で、父親の森の木のエピソードや、幼いいとこの卵のエピソードなどの顛末も描かれていきます。もちろん、どうなるかは観てのお楽しみです。

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 この作品のテーマとして、小さな村で生きている人々を描くということが挙げられると思います。このテーマ自体は前作と同様ですが、そこで語られる物語の深みは段違いに感じられました。書いたように、一つ一つのエピソードが本当に心地良い。これらの物語が持つ素朴なあたたかみは、間違いなく本作の魅力のひとつです。この作品に出てくる人々は、みんなどこか幸福そうに見えます。それは、さきほど挙げた次作『UZAK/冬の街』――イスタンブールという都会での人々の暮らしを描いた作品です――に出てくる人々とは対照的です。

 しかし、なんと言っても本作の最大の魅力は映像の美しさにあるでしょう。牧歌的な村の風景、森の緑、そして光。前作でも映像面には惹かれるものがありましたが、『5月の雲』は最高です。とくに終盤は、息をするのも忘れ、画面に目が釘づけになるほどでした。ラストシーンも完璧。これほどスクリーンで観たいと思わされた映画は久しぶりです。ほかにも、ムザフェアが尋ねてまわる人々の顔の切り取り方も良かったなぁ。脚本と映像が組み合わさって、本当に素晴らしい映画になっています。ジェイラン監督作品では、やはり自分はこの作品がベストですね(新作がものすごく評価が高いので楽しみなんですが)。

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 最後になりますが、両親の役を前作と同様ジェイラン監督の両親が演じていることもあり、主人公の映画監督であるムザフェアにはジェイラン監督自身が投影されているようにも感じました。DVDの特典のメイキングを見ると、ムザフェアが映画を撮るように、監督も映画を撮っていることが分かります。このあたり、上記のテーマだけでなく、自分の過去を回想するような監督の想いも込められた作品になっていると言えるかもしれません。

 個人的には大満足の一本。DVDは、前回紹介した『カサバ−街』とセットでUK版が発売されています。本当にオススメなので、ぜひ(・∀・

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本作の監督インタビューを和訳した「その2」はこちら!
http://planeta-cinema.at.webry.info/201203/article_2.html

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内 容 ニックネーム/日時
モノクロームの短篇映画(繭)と(5月の雲)を併せて観ました。後者にはジェイラン監督自身みたいな映画監督が出てきて疲れた眼差しでいつも何かを撮しているし映画の中にも前者の一部を見ているようなシーンもあって繋がっていました。以前トルコの映画監督の(卵)(蜂蜜)などのユフス三部作を見たことがありますが、家族や自然を見つめる姿や小さなエピソードを丁寧に織り成していく手法などに共通性を感じました。アントン・チエホフの戯曲が好きだとジェイラン監督のインタビューにあったし後者はチエホフへのオマージュ映画であることがエンドロールに みられました。日常生活の中のユーモアのセンスはチエホフからなのでしょう。珠玉の短篇映画の(繭) は写真を勉強していた監督の家族へ想いがぎゅっと詰まっていて両親の昔のアルバム・古い写真はトルコの過去の歴史とリンクしているのかも知れません。口から蟻が這い出て来る仔猫の死のシーンとかも挿入されていてブニュエルのシュールな実験映画みたいでしたがー。両作品
PineWood
2015/07/09 04:18
両作品を観て映像詩人ジョナス・メカス監督の故郷リトアニアへの想いを込めたエッセイ・シネマも思い出しました。
PineWood
2015/07/09 04:42

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