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zoom RSS 『Police, Adjective』 コルネリウ・ポルンボユ監督 その1

<<   作成日時 : 2012/08/19 20:26   >>

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以前紹介した快作『ブカレストの東、12時8分』のコルネリウ・ポルンボユ監督の新作を今回は紹介。新作と言ってももう3年前の作品なのですが(笑)、2009年のカンヌ映画祭で「ある視点」部門の審査員賞に輝いた『Police, Adjective』という作品です。法とモラルについての問題を提起する一品になっています。

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『Police, Adjective』(2009)
原題『Politist, adjectiv』
監督/脚本 コルネリウ・ポルンボユ
製作 ルーマニア
受賞歴 2009年カンヌ国際映画祭 「ある視点」部門審査員賞・国際批評家連盟賞

◎あらすじ
 刑事のクリスティがいま担当しているのは、ドラッグを吸っている高校生を尾行するという捜査だ。彼らがドラッグを吸っている証拠を集めながら、ドラッグのディーラーを暴くよう上司に命令されている。しかしクリスティは、軽いドラッグを吸っているだけの青年を逮捕し、何年も刑務所に閉じ込めるべきなのか葛藤する……。

◎感想
 カンヌでカメラドールを獲得した『ブカレストの東、12時8分』から3年、コルネリウ・ポルンボユ監督の新作『Police, Adjective』を紹介します。前作がとても面白い作品だったので、カンヌで賞を獲ったこともあって本作のDVDはすぐに買ったのですが、いまになってやっと観ました(・∀・; いいと思う点もあれば、ちょっと好きになれない点もある、個人的には評価が難しい作品になりました。

 映画は、主人公の刑事クリスティが尾行をしているシーンから始まります。まだまだ若手の(ちなみに新婚さん)クリスティが尾行するよう命じられた相手は、ドラッグを吸っているとの密告があった高校生。尾行の目的は、その青年がドラッグを吸っている証拠を集めることと、彼がどこからドラッグを得ているのか(あるいは彼がディーラーなのか)を突き止めることのようです。

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 このオープニングからそうなのですが、本作はワンシーン・ワンカットで一つの場面にとても時間をかけるスタイルがとられています。尾行のシーンはこのあと何度もあるのですが、クリスティが歩いていくだけのところをじっくりと見せます。これは実際の尾行も、このように時間をかけ辛抱強く行われることを示しているのでしょう。
 あるいは「待ち時間をちゃんと待つ」というのも印象的でした。たとえば、上司がクリスティの報告書を読んだら電話すると言ったとき、本当に数分待たせてから電話がかかってくるというシーンがあります。出来事をリアルタイムで進行させることで、リアリティを出そうとしているのだと思います。なかなかできない表現なので挑戦的でいいと思うのですが、これは退屈さと紙一重な気もします。

 さて、尾行から、高校生が吸っているのは軽いドラッグ(マリファナ、ハシシュ?)であり、また彼自身は当然ながらディーラーでないということが判明します。この事実を受けてクリスティは、この程度の罪で青年を逮捕し、何年も刑務所に入れるべきではないと考えるようになります。検察官に自分の思いを吐露しつつも尾行を続けるクリスティですが、やはりその思いは強まるばかり……。
 ちなみにですが、日本人からするとマリファナやらハシシュが「軽いほうの」ドラッグと聞いても、「いやいやアウトでしょう(・∀・;」と思ってしまうのですが、ヨーロッパではそうでもないんですかね。以前ドイツ人の友人もマリファナを吸ったという話を普通にしていましたし、海外ではタバコの延長のような受け止め方なんでしょうか。

 いずれにせよ、クリスティ自身はマリファナを重い罪とは思わず、また他のヨーロッパ諸国のように、ルーマニアでも軽いドラッグに対しては法の規制が緩和されるだろうと考えています。そして、ついにクリスティは「青年を逮捕すべきではない」と上司に訴えることにするのですが……このあとは観てのお楽しみに。

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 それでは、本作全体についての感想を。

 まず、作品のテーマ自体はもう明らかでしょう。作品中の言葉を借りれば、「法」と「道徳(法則)」あるいは「法」と「良心」の対立がテーマとなっています。「法律」はつねに守られねばならないのか。それとも、人間の「良心」に照らして考えれば、「法律」に従うよりも「正しいこと」があるのだろうか。
 「法律」は人間が制定するものですから、適切でない法律も当然あるでしょう(法律が適切かどうかを判断する基準は何でしょうか)。逆に個人の「良心」によって、どこまで適切な行動が取れるのかにも疑問の余地が残るかもしれません。それが単なる「ひとりよがり」でない確証はどこにあるのでしょうか。それならば、もし自分がクリスティだとして
(A)軽い罪で青年を破滅させるべく逮捕する
(B)軽い罪で青年を破滅させることはないので見逃す
このどちらを選ぶでしょうか。もちろん警察は刑法にしたがって動いている国家の組織ですから、そこに属する警官はどんな場合でも「法律」を遵守しなくてはならないはずです。一方で、しかし……とも思ってしまいます。
 個人的にこのテーマはかなり心に迫るものがありました。本作ではマリファナなので日本人的には馴染みがありませんが、日本でも法と良心がぶつかるような例はあるでしょう。そういうときに、どうするべきかと葛藤する心理はよく理解できる気がします。

 映画はこうした困難な、しかし興味深いテーマをもって終盤に進んでいきます。この終盤で、『Police, Adjective』=『警察、形容詞』というタイトルの意味も分かります。また、ラスト(最後の最後)まで見れば、クリスティが最後に下した決断も一目瞭然です。その判断をどう受け止めるかは、鑑賞者それぞれに委ねられています。この最後の選択については監督も「その2」の記事のなかで言及しているのですが、個人的にもかなり書きたいことがある箇所ではあります。

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 ネタバレになるので詳しくは言えませんが、本作の終盤からラストは、こうした意義ある問題を提起しているわりには弱いと感じました。法律を選ぶにせよ良心を選ぶにせよ、論理的に説明するならばもっと説得力のある仕方で展開するべきだし、論理では説明できないような感情に依拠するならばもっと共感できるような仕方で描いて欲しかったと思います。詳細は控えますが、最後は少しナンセンスな気がしていました。

 映像面に関しては、前述したように長回しで、じっくり静かにクリスティを中心としてキャラクターをカメラに収めていきます。自宅でのクリスティと奥さんのシーンが2,3回あるのですが、なぜかこの部分がとても好きでした。大した話があるわけでもないのですが、自然な夫婦の風景が描かれていました。静かな作品が多いヨーロッパ映画のなかでもかなり特徴のある作風になっている気がしましたが(前作と比べても)、監督にはこの方向性で行って欲しいと思います。

 というわけで、問題提起はいいし、間の取り方も独特でいいのですが、オチの付け方が自分の趣味ではないという作品でした(これは本当に自分の好みの問題です:笑)。海外ではなかなかの高評価なようですし、ルーマニア映画の波が気になる方は、前作とあわせて『Police, Adjective』をチェックしてみてください。DVDはUK版、US版がありますが、やはりUK版の方が安いですね。

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本作の監督インタビューを和訳した「その2」はこちら!
http://planeta-cinema.at.webry.info/201208/article_2.html

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