『UZAK』&『Climates』 ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督インタビュー

『UZAK/冬の街』と『Climates/うつろいの季節(とき)』 についてのジェイラン監督インタビューです(・∀・ もともとのインタビューは、監督の作品(の抜粋?)を上映しながら、観客の前でのティーチ・インといった感じだったようです。あまり量は多くないですが、ジェイラン監督についての情報は少ないと思うのでぜひご一読を。

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インタビュー原文はこちらからどうぞ。
http://www.guardian.co.uk/film/2009/feb/06/nuri-bilge-ceylan-interview-transcript
なお初期作品やQ&Aについての部分は省略させてもらいましたm(_ _ )m

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まずは『UZAK/冬の街』について。

――『UZAK/冬の街』は、はじめて都会を舞台とした映画になりました。それからまた、監督のファミリーに新たなメンバーが加わりましたね。通りにいる女性を演じた、奥さんのエブルさんです。彼女が登場するシーンは素晴らしいですね。ユスフが彼女をじろじろ見て、サングラスをかけてカッコつけはじめると、タイミング悪く車の警報機が鳴ってしまうという笑えるシーンです。
 このように、監督の作品には乾いたユーモアが多く見られます。監督にとって、ユーモアや喜劇的な要素はどのような意味で重要なのでしょうか。

 私は、こういう風に人生を見ているのだと思います。物語の中にユーモアを入れるつもりはありませんでした。私はただ、できるかぎり物語を現実的なものにしたかったのであり、現実の人生とはユーモアに満ちたものだと思ったのです。家に一人でいると、自分がたくさんのおかしな状況にいることに気付きます。鏡に映る自分を見たりすると、なんとも言えない表情をしていたりとかね。そういうわけで、本当に計画してユーモアを入れたわけではないのです。いま言われたシーンで観客たちが笑うのを見て、少し驚いたほどです。

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――ある夜にマフムトがポルノを見始めると、ユスフが部屋に入ってきたので、素早くタルコフスキーの映画に切り替えるという場面があります。ユスフを早く寝室に戻すための策略です。これはどちらかといえば、皮肉に思えます。とくに監督はタルコフスキーのファンなので…ですよね?
 はい、彼は私の好きな映画監督の一人です。ただし、私があのシーンに彼の作品を選んだのは、私が好きだからというわけではなくて、それが適切だと思ったからなのです――タルコフスキーはロングショットを用いますが、ユスフのような田舎の青年が慣れ親しんでいるようなタイプの映画と対照的なものが欲しかったので。それから、写真家にとっての理想として、タルコフスキーがもっともふさわしいというのも理由です。批評家の方々は概して、ユスフを追い払うためにタルコフスキーを見始めたと考えたようですが、それは私の意図ではありませんでした。

――批評家はいつも間違っている(笑)
 おそらく私が悪いのでしょう(笑)しかし、序盤のほうで、マフムトが友人たちと議論しているシーンがあって、そこで一人の友人がマフムトが理想を失ってしまっていることを批判します。それで彼は家に帰ってから、理想をもう一度見つけるためのきっかけを作ろうとするのです。これが、彼がタルコフスキーを観た理由です。彼はきっと再び情熱を取り戻すことができるだろうと思っています。マフムトはユスフのことを気にしていたわけではありません。もちろんユスフは退屈してしまいますが、それは副作用のようなものでした。ユスフがベッドに戻ると、状況が変わって、マフムトはまた情熱を失いポルノを見始めます。それは、その方が楽だからです。それから、彼は自分の中にある激情を取り除きたかったのです。これが、ポルノに切り替えた理由です。

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――この作品で印象に残ったことの一つに、非常にわずかなセリフだけで多くのシーンが撮られているということがあります。そしてそれはあなたの作品ではよくあることなのですが、言葉を使わない方が人間は自らをよく表現できると考えているのですか。
 実際、分りませんね。私はキャラクターたちを黙らせようとしているわけではありません。脚本には、たくさんのセリフがあります。しかし撮影現場でしか、脚本に書いたことがよかったのかどうかということは分からないのです。撮影中にはいつも、シチュエーションにあったバランスを見つけ出そうと努力しています。そうすると、あちこちでセリフをカットすることになり、最後にはセリフは一つも残らなくなるんです。そのときに私はいいバランスに達したと感じるし、これをどうすればいいのか分かりません。ただ、なぜだか私にはそちらの方がより納得できるということなのです。もちろん、セリフはとても慎重に扱われるべきものですし、私もセリフを吟味しました。会話の本質を理解するために、たくさんの会話を録音したりもしました。会話というものは、論理的に進行するものではありません。誰かが何かを言ったあとで、他の人がまったく関係ないことを言ったりします。会話を分析すれば、そういうことはよく目にするでしょう。ですからセリフを使うとするならば、あまりに論理的にするべきではないし、映画の秘密であったり映画の意味についての情報をセリフはたくさん伝えるべきではありません。私にとってセリフとは、キャラクターたちがナンセンスなことや、映画と関係しないことを話している場合にのみうまくいくものなのです。できる限りこれを実践するのが好きですし、セリフを用いないで映画の意味を伝えられるように努力しています――シチュエーションや、動作などでね。これが私の意図なのですが、たぶん成功していないのかな。

ここから『Climates/うつろいの季節(とき)』について。

――監督はエブルさんと二人で脚本を書き、そしてメインキャラクターを二人で演じられています。そして、この作品は恋愛関係の破局を描いたものです。破局を描いた作品の中でももっとも誠実な作品の一つであると同時に、男性性(男らしさ)を扱った作品の中でももっとも情けないほどに正直な作品の一つであると言えるでしょう。本作は、他の多くの作品が触れもしなかった領域に進んでいきます。このような作品を作るのに、苦痛を感じましたか。
 いいえ、まったくなかったですね。実際、私たちは人生の暗い側面について語り合うのを避けるような種類のカップルではないんです。私たちはそういうことについて話すのが好きなのです。ですから、人生の暗い側面と向き合うことで、むしろセラピーのように安心できるし、暗い部分もそれ以上大きくなることはないと思います。小さいうちに蛇の頭は狩るべき、ということですね。そういうわけで、私たちにとってはまったく難しいことではありませんでした。

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――この二人の役を、ご自分たちで演じようと決めたのはなぜですか。
 この映画で伝えたいと思っていることというのは、他の人には説明したり表現したりしにくいものだったからです。俳優たちにどう演技すべきか伝えるのに、いちいち苦労したくなかったんです。それからまた、私たちが休日に脚本を書き、作品について話しあっていたときに、妻と私は自分たちでテスト撮影をしてみたのですが、その結果が気に入ったということもあります。これが、もう一つの理由ですね。トルコでは、私の演技は好かれないのですが(観客笑)、ヨーロッパではそれよりは気に入ってもらえていると思います。しかし、幸運なことに、すべての観客が妻の演技をよく思ってくれています。

――この作品は監督にとってはじめてのテクノロジーを使った映画になりました。作品全体で、あまり使われてこなかったような仕方でのデジタル・テクノロジーが使われています。デジタル・テクノロジーは、表現力の新たな道を切り開くものだと考えているのでしょうか。
 その通りです。デジタル・テクノロジーは、より深い、これまで隠されていたようなものを表現できる未知数のポテンシャルを秘めていると考えています。ですから、フィルムはもはやナンセンスなものに思えます――なぜなおフィルムで撮影するのでしょう?この映画は、古いテジタル・テクノロジーを使って撮影されましたが、いまはもっとよいものになっています。フィルムは高価であり、多くの不便な点があります。私にとってはフィルムとはこういうものであり、映画製作や写真のためにフィルムを使うことは二度とないでしょう。私たちのより深い感情を表現するこの新たなテクノロジーの利点を活かすとともに、それに対してオープンになるべきではないかと考えています。

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この記事へのコメント

PineWood
2015年10月03日 18:24
今日、ジェイラン監督特集の最終日に(うつろいの季節)を見ました。ある夫婦の破局、別離、再会を見事に描き出した作品。途中、前の彼女と逢うシーンの激情はチェホフ的なチップを食べるエピソードと共に挟まれて接写と長回しを組み合わせた名シーンです。冒頭シーン、ラストシーンの妻の涙や砂に顔が埋められるシュールなシーンなど素晴らしい!!ジャン・ルノワール監督の(ピクニック)同様、映画史上の傑作。心より拍手を送ります♪

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